人身御供





「あんまり神様っぽくないですね」

 そう言ったら、三日月宗近は声を出して笑った。ほら、そうやって笑うところとか、神様って感じしない。

「ではどういうのが神様らしいと?」
「何かこう、威厳があるというか、厳格な感じ?」
「俺には威厳はないと」
「そうじゃなくて、三日月さんは物腰柔らかそうじゃないですか。確かに威厳も感じられないですけど。いや姿格好は高貴な感じしますよ」
「助け舟になってるのかよく分からない褒め方だな」

 私の必死のフォローも、そもそもの最初の発言も、三日月宗近は冗談としか受け止めていないらしかった。いや、本気ととられて怒られてもそれはそれで困るのだけれど。

「それに今は人間と同じ状態になってますから、それが神様っぽくないのを顕著に感じさせてるのかも」
「ふむ。そうなのか」
「なんか神様っぽいことって出来ないんですか?」
「主は唐突な無茶を言うのだな。そうだな、例えば」

 三日月宗近は数秒ほど思案すると、私の頬を両手で包んだ。突然の行動に驚いていると、その三日月が映る目をにいっと細めて、私の頬に当てていた右手をスルスルと鎖骨あたりまで撫でるように動かした。

「主の魂を、人身御供として取り出すとかな」

 は、と口をあんぐり開けていたら、冗談だと笑われた。神様っぽくないとか言ってごめん。さっきの三日月さんめっちゃ怖かった。