出来損ないしか産めないね





 そんなつもりは無かったんだよ、と私を見下ろす男が言った。ごめんねと謝る顔は口元がニヤニヤと緩んでいて誠意なんてものは欠片も感じられない。

「おい何してんだメローネェェ! テメエがヘマしたからターゲットが逃げるだろうがァッ!」
「悪いなァ〜。敵さん、思いの外ガッツがあってさァ」
「言い訳すんな! ブッ殺されてえかッ!」
「『ブッ殺した』しか使っちゃあダメなんじゃあなかったっけ?」
「ターゲットの前にテメエの息止めんぞコラ」

 私の前で男二人が口論をしている。よく聞こえる筈なのに、何を話しているのか分からない。顔もよく見えないし、何だか視界が赤い。あれ、なんか変だ。何が変だ? あー、あれ?

「コイツはどうすんだよ。『母親』に使えるか?」
「ターゲットとの相性確認はしてないが、まあ……急ごしらえには間に合う。プロシュートは一応追いかけてくれよ。見失うことは無いだろうけど」
「テメエ……終わったら覚えとけよッ」

 ぼやける視界の中で影がひとつ消えた。
 頬をペチペチと叩かれた。「ほら起きて」と声が聞こえる。自分が微睡んでいたのだと今初めて気がついた。

「起きた?」男が顔を覗き込んだ。

 身体がだるくて起き上がれない。どうして地面に寝転がっているのか思い出せないが、頭と鼻がズキズキと痛む。男の顔を見上げようとすると、男は「そのままでいいよ」と言って、何か機械を取り出した。質問に答えろという。