吊られた男





 そいつは俺の名前を呼びながら相も変わらずベタベタとくっついてきて鬱陶しい事この上ない。無視をしてもめげずにその腕を絡めてくるのだからその図太い精神を持ってるなら何でPYSクオリアなんかに手出したんだと問い質せば「それはそれ、これはこれです」とヘラヘラとした顔で返された。うぜえ。

「櫂は可愛いですねー食べちゃいたいです」
「生憎カニバリズムは専門外だ」
「もうっ、そういう意味じゃないって分かってる癖に〜」

 うぜえ。そう言って寄せてくるレンの額を人差し指で弾くがこいつはへらへらした顔を変えない。テツにでも連絡して引き取ってもらうべきか。

「でも櫂なら本当に食べちゃっても良いかも知れません。細くてあまりお肉なさそうですが」
「余計なお世話だ」
「男は狼なのよ〜ですよ〜」

 デッキの一つも持って来ていないこいつとの会話は不毛なだけなので俺は携帯を取り出した。精々お前の世話焼き係に吊るしてもらえ。