相生のひと





「俺達いつまで一緒にいるんかね」

 居酒屋で焼酎を嗜みながら三和が呟いた。気付けば互いにすっかり良い年になっていた。
学生時代あれだけ親密にしていた人達とも気付けば疎遠になり、連絡と言えば結婚しただの子供が生まれただのそんな報告の葉書が家に届くときくらいだ。

「さあな」
「だって小学生の頃からだぜ?他の奴等なんて同窓会とかで会うくらいなのによ」

 程よく頬を紅潮させた三和は普段よりも更にヘラヘラした笑みを浮かべながら喋り続ける。

「この間久しぶりにアイチに会ったんだけどよーしょっちゅう櫂と会ってるぜって言ったら驚いてた。『付き合ってるんですか?』とか言われたよ」

 ハハハと笑いながら三和は無くなりかけてい焼酎を一気に口に含む。アイチか、最後に会ったのはいつだったかな。懐かしい名前だ。
 三和は追加で注文したビールを上機嫌に飲み始めた。すっかり顔は林檎みたいに真っ赤だった。帰る頃にはすっかり潰れているんだろうな。会社の同僚と飲みに行くときは抑えるよう意識してるなんて言っていたが俺の前ではいつもこんな調子なので本当なのかどうか疑わしい。

「俺だって女の1人や2人いるってのーいるってか欲しいってのー」
「お前なら別に付き合ってやっても良いかも知れないがな」
「マジかよーじゃあ付き合ってくれよ櫂ー俺寂しい」

 ぽつりと呟いた言葉に自分でも驚いたが、すっかり出来上がった三和は自分が何を言っているのかすら分かってない様子だ。段々と呂律が回らなくなってきた口で訳の分からないうわ言を話し続けている。
 俺も酔いが回ってしまっていたらしい。まさか自分が同性愛者であるような事を言ってしまうとは。三和が出来上がってくれていて助かった。普段の調子のこいつに聞かれていたら何を言われていたかわからん。

「でもよー俺も櫂なら付き合っても良いと思うんだよー俺櫂のこと愛してるしー」
「寝言は寝てから言え」
「寝言じゃねえよー高校生くらいからずっと思ってたんだってー秘密だったけどぉー」

 酔いが冷めた頃にはこの状態の時に何を言っていたのか覚えてないくらいだから今のこいつの言う事は一切信用出来ない。そうなのは分かっている筈なのにどこかその言葉に期待している自分がいるような気がするのは俺も相当酔いが回っている所為に違いない。