災厄祈願





 何だか雰囲気変わったねって、周りからよく言われるようになった。髪型を変えたわけでも、服の趣味が変わったわけでも、恋をしたわけでもない。何も私は変わっていない。なのに、周りは私に変化が起きたと言う。
 一体何故か。取り立てて何か生活に変化が起きたわけでも無いが、強いて言うなら、不思議なカードを拾った。
 それは、買い物の帰り道にたまたま見つけたものだった。きっと持ち主は困っているのだろうと思ったのに、何故か手放す気になれなかった。きっとこのカードは私を選んでくれたに違いない、なんてすら思った。趣味でちょっとカードゲームをやっていた事もあり、私はそのカードを御守を持つような気分で自分のデッキに入れる事にした。
 それが数日前のことだ。

 そして今。
 私は襲われている。所謂男女間で起こるそういう意味ではなく、いや、こうして対峙している相手は男の人なのだが、とにかく、そういう猥褻な意味ではなく、言葉の意味そのまま、襲われている。

「あの、これ、何ですか」
「ナンバーズを所持しているだろう。寄越せ」
「ナン……? 何ですか、それ。あの、離して、ください」

 男の人は私を見ると、私の腕の間に何かを飛ばしてきた。ロープのようにしっかりと私の腕を捉えたそれは、男の人と私を繋ぎ止めてしまった。逃げる事が出来ない。
 男の人はデュエルディスクを構えると、私にデュエルをするように催促をしてきた。私と彼を繋ぎ止めているそれは、デュエルを終わらせない限りは解かれる事は無いと言う。突然の出来事に、私は半ば混乱気味に、言われるがままに鞄に手を突っ込む。早く、ここから逃げたい。それだけを一心に、震える手で鞄から取り出したデッキをディスクにセットした。