海中に咲く花





 彼女の後ろ姿をぼんやり眺めながら今日も話しかけることができなかったと一人寂しく寮に帰る。仕方の無いこととは言え、仲睦まじく言葉を交わしている噂の問題児の遊城十代に敵いもしない嫉妬心を渦巻かせながら、今日も私は彼女の後ろ姿を眺めるだけなのだ。きっとこれが卒業まで続くのだろう。貴女の事を執拗なまでに見つめて貴女の些細な表情全てを捉えんとばかりに目に焼き付けている私の存在を貴女は知らないまま卒業するのだろう。いっそそっちの方がお互いに幸せなのかもしれないと腑に落としたくても精神的にまだまだ未熟な私にはなかなか出来ない。深い水底で咲く花を掴みに行くだけの勇気や自信は私には無いのだ。きっと溺れて死ぬだけに違いない。