カンパニュラの鈴





 神話のカンパニュラはドラゴンに助けを求める前に殺されてしまった。きっと同じような状況に陥れば愚図な私は同じように助けを求める前にナイフで心臓を一突きされてしまうのでしょう。愚図でのろまな私のことですもの。私が一番良く知っている。

 ハートランドから大事な使命を承ったというのに、緊張からか不安からか私の身体は震え上がってしまっている。なんて情けない。成功よりも失敗したときのヴィジョンがはっきりと見えてしまうのは私がこの使命に対するプレッシャーとか責任とかにすっかり負けてしまってるからなのだろう。
 同じ使命を託されたカイトさんには嫌そうな顔をされた。そりゃ愚図な私と組まされたんだもの、仕方ない。お互いがどうやって立ち回るか軽く話し合った後、自分から離れている間に何かあったら連絡しろと無線機を渡された。おやおやこれでは神話のカンパニュラに似ているな、なんて思わず早合点してしまう。
 大事なものを守るのではなく奪いに行くのだ。どちらかと言うとカンパニュラよりも金の林檎を盗みにきた盗人の方が立場的には当てはまるのだ。それでも自らをカンパニュラだと主張するのは、この使命は私にとっての誠意と正義に基づいて行われるからだ。人によっては悪道だと罵るこの行いは私にとっては全く揺らぐ事のない正しい物として行われるのだ。だからドラゴンを操るカイトさんに渡されたこの無線機はカンパニュラに取っての鈴だ。きっと愚図な私のことだから、失敗したときには使われる事は無いのだろう。ただ、絶対に違うと言い切れるのは、きっと最後は、カイトさんはカンパニュラに取ってのドラゴンには絶対なり得ないという事だ。