「はぁ」

「…」

「はぁ〜〜」

「何?なんなの?うざいんだけど?」

「聞いてくれるん?」

あからさまに聞いてくれと言っているようなことをしておいてこいつは何を言ってるんだ。そう思いながらも、聞く体制になってあげる私は優しいな。

「いや、それがな、告られたんやけど」

「良かったね。自慢うぜぇー」

「自慢やないって!ちゃんと聞けや」

「何?何が嫌だったの?」

「何かもう笑い話になるレベルなんやけど」

「うん」

「好きですーって言われて、俺テニスが今大事なんやて、堪忍な。っていつも通りのテンプレの言葉で断ろうとしたんやて」

「うん」

「こっから重要やで!!!」

「わかったわかった」

「テニスのことがあると思うけど、私と付き合ってくれないかな…?侑士と付き合うためになら、小悪魔になろうかなって」

「ぶっ」

小悪魔!!!!小悪魔!!!!突然の小悪魔!!!!

私の脳内は小悪魔で埋め尽くされていた。小悪魔ってなんだ。小悪魔になるってどういうことだ。テニスの邪魔するのか。

ダメだ。考えれば考えるほどスパイラルに陥る。小悪魔スパイラルだ。小悪魔の威力半端ない。とりあえず、腹筋が死にかけです。

「小悪魔っ…小悪魔ぁぁぁぁ!!!!」

「あかんやろ?あかんやろ!!!いや、俺テニスが今一番やで、って言ったら、何て言ったと思う?」

「それでも私は侑士が好き」

「惜しい。そっか…でも、私、侑士のこと諦められない。試合とか、差し入れ持っててもいいかな?それで、少しでも気が変わったら教えて、やってん」

「アウトォォォォォォォ!!!」

「せやろ!?せやろ!?差し入れはない。重い重い」

「アウト。十分アウトに属する」

「気ぃ変わるわけないやろ…差し入れとかテニス部ファンクラブに殺される覚悟なんか…」

「ファンクラブあんの?」

「非公式やけど」

「初めて知った」

「それにさっきからスルーしとったけど、しとったけど!!何で侑士呼びなん!?」

「それは気になってた」

「普段勝手に侑士って呼んどんのは良いとして、本人の前やったら変えるやろ」

「まあねー。そうだよね」

「モテるんもめんどくさいってことや」

一通り笑い終わって、ふう、と一息つく。

普段忍足がこんなことを言っていたら、自慢うぜー、と最初に思ったように思ったはずだけど、今回はドンマイという他はない。さすがにめんどくさすぎてどうにもなんないよな。

「もう嫌んなるわ」

「何て答えたの」

「何に?」

「その差し入れどーのこーの」

「さすがに断らなあかんよなー思うてん」

「そうだね」

「やで、そういうのやめてくれんかなって言ったら、急にヒステリックや」

「うわー、ドンマイドンマイ」

見たことがないほど忍足は落ち込んでいるようだ。そんな忍足を尻目にこの状況を楽しんでいる私はゲスに見えなくもない。実際ゲスではないけどね。

でも、やっぱりその女子はおかしいんじゃないかなとは思うよね。世の中には変な女子もいたもんだ。普通はそれで嫌われるとは考えないのかな。それだけ自分に自信があったのか。

「こういうんはあんま言いたくないけど」

「何?」

「あの、あれ。告白してきたやつな…D組の青木さんなんやけど」

D組の青木といえば、あのいわゆる、メタボリックで有名な…。

「青木?」

「おん。せやで」

「もうやだー忍足嫌い」

「なんで俺やねん」

「だって見事に面白し。そんなやつが自分に自信あるのか…悪くないと思うけどさ」

「俺もそう思うんやって!あんま言いたくないんやけどな!?言いたくないんやけどな!?」

はぁ、と忍足は何度目か数えるのも嫌になるほどついたため息をついた。

そして、私も何度目かわからないが、お腹を抑えた。ああ、お腹が痛い。
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