ザーザーと雨の降る音が教室に響く。今日は生憎の雨です。

「雨ってテンション下がる」

「せやなぁ」

「侑士何かに付き合ってないでさっさと帰れば良かった」

「私も歩いて帰ってれば良かったな」

「何で2人してそういうこと言うん?俺のせいにされても困るんやけど」

「だってお前のせいだし」

私たち3人のテンションが低いのは30分前にとあることがあったからだ。

めんどくさいから、簡単に説明すると、忍足が今日日直だったため、先生が忍足に資料を運ぶように頼み、ちょうど雨のため迎えを待っていた私と、忍足に引っ付いていた向日が巻き添えにされた、ということがあったのだ。

荷物は重いし、多いし、雨だし。という嫌ーな三拍子が揃ってしまったため、テンションが低いのだ。

「普通に運んでてもつまんねーし、グリコしねぇ?」

「グリコってあれ?チョコレートとかの?」

「そうそう」

小学校のときによくやった遊びだ。足の長い人が有利だというものすごく不平等な遊びだと私はずっと思っている。

「懐かしいなぁ」

「一番最後のやつが最初についたやつに何か奢るってことで!行くぜ!さーいしょはグー!」


しばらくすると、差が簡単についてしまった。足が長い短い関係なしに、向日がじゃんけん弱すぎた。今進んでいる順で言うと、忍足、私、向日の順だ。忍足と私の間はだいたい7歩、私と向日の間は30歩くらいは軽くあいている。

「クソクソ!!何でお前らばっかり勝ってるんだよ!!」

「岳人!もっと跳んでミソ!」

「うっせぇ侑士!!」

「何それ」

「岳人が部活のときによう言っとるやつ」

「だっせぇ」

「おい苗字聞こえてるからな!」

絶対奢らせてやると勝手に燃え上がる向日だが、やる気だけでは距離は縮まらず、向日が勝っても、私たちが勝っての繰り返し。微妙に歩幅を小さくしても追いつく様子はなかった。

「なんでだよ!!!くっそ、何とかして逆転するからな!」

「もう諦めろよ」

「あ、跡部やん」

「忍足?と向日と苗字か。何やってんだ?さっさと帰りやがれ」

「先生にこれ運べって頼まれたんよ」

「そんなものさっさと終わらせろ」

「そうしたいのは山々だけど、グリコしてるからなかなか進まないんだよ」

グリコ?と首を傾げる跡部さんにグリコの説明をする。跡部さんはグリコなんて知ってなくて当たり前だよね。

「なるほど、勝った方が先に進むことができる…弱肉強食ってわけね!」

「何か違うと思う」

「跡部もやろーぜってことで最初からだな!」

自分が1位だったら嫌がる癖に、こういうときだけ調子のいいやつめ。

向日の位置まで戻り、今度は4人でやり始めるというなかなかシュールな光景が出来上がった。

しかし、最初は4人だった廊下も次第に3人まで減ってしまった。人が消えたわけではない。そんなことあってたまるか。

なぜ3人になったかと言うと、跡部さんが完璧な1人勝ちを続けているからである。もう姿が見えない位置まで行ってしまった。忍足のケータイで通話をしながら続けている状態だ。

『お前らが何を出すか何て見え見えなんだよ!俺様がキングだ!』

「跡部さんもう着いた?」

『ああ、もう扉の前にいるぜ』

「ほな、そこで待機やな」

通話を一度終了し、振り出しに戻ったかのように3人でグリコだ。今回もさっきと同じ順番だが、私と向日の距離が少し近い。



また時間は進んで、もうグリコを始めてからかなりの時間が経っていた。きっと、私の親ももう迎えに来ている。でも、ちょっと待ってくれお母さん。この戦いだけは最後まだやらなくてはいけないんだ…!

忍足はもう扉の前に立っている。つまり、私と向日の一騎討ちというわけだ。

「よっしゃ、勝ーち!」

「いや、でもグーだし、三歩ではいけないはず」

「岳人様のことなめんなよ!」

別になめてはない。ただ、人類的にそれは不可能だというだけで。

「ぐーーりーーこっ!!」

「3位岳人やな」

「もっと跳んでミソ!っと、苗字?」

私は今目を疑った。ありえない。人外がいる。ありえない。ありえないって!!!!!どんだけ跳ぶのあいつ。

「そんなことがあってたまるかあああ!!」

「もう諦めや」

「うん、諦めるけど。いいけど。負けでいいけど」

「おい」

「はい」

「この前のアイス」

「あーっと、ゴリゴリくん?」

「ああ」

「が何」

「奢るんだろ?」

ああ、そんな話もあったなーと思い出す。ゴリゴリくんならそんなにお金かからないしいいか。

この前の件から跡部さんはゴリゴリくんがお気に入りのようだ。

「俺バーゲンダッツ」

「俺はパピコンでえーよ」

「お前らには奢らんわ!」
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