いつも通り千尋ちゃんとお昼を食べる。in C組だ。今日はうちの料理が大好きなお母さんがご飯を作ってくれたから、購買ではなく、お弁当だ。一番の楽しみの春巻はもう胃の中。

「忍足がさ、ずっと激ダサって言ってきてさ、もう嫌になるよね。もう慣れたからいいけど」

「宍戸くん結構言ってるからね。流行らせようとしてんのかな?」

「千尋ちゃんって宍戸くんと仲良いの?」

「別に仲良いわけじゃないけど、クラス同じだったら話してるとこくらい聞くでしょ」

「宍戸くんってCなんだ」

「うん」

初めて知った事実だ。宍戸くんに、千尋ちゃんとなると、C組は結構明るいクラスなんだろうと予想できる。

「あと、テニス部なら芥川くんもいるけど」

芥川という名前を頭の中で探す。芥川龍之介じゃなくて、テニス部の芥川。確か、樺地くんによく担がれてることで有名な子だったはず。名前は思い出せなかった。

「芥川くんとは知り合いじゃなかったんだ」

「うん」

「向日くんあたりの繋がりで知ってると思ってた」

「知らない知らない会ってない」

「ふーん。起こしてきてあげようか」

千尋ちゃんが自分の席より後ろを向いてニヤリと笑う。そこには黄色の髪の毛の男の子が寝ていた。

あれがよく寝ていて樺地くんに担がれている芥川くんか。

「遠慮します」

「そうですか」

千尋ちゃんは黒板を向いて、私は千尋ちゃんの方を向いてご飯を食べているから、私からは芥川くんの様子がよく見える。

一度話を中断して、ご飯を黙々と食べていてると、芥川くんがもぞもぞと起き上がった。大きい欠伸をすると、私と目が合う。

何だこの状況は。目をそらした方か負けなのかと思うような睨めっこ状態。芥川くんは私と目を合わせたままうーんと何かを考えるように首を捻っている。私はこの子に知らない間に何かをしていたのだろうか。

「どうかした?」

「なんでもない」

「名前がどっかぼーっと見てるとさ、そこに何かあるのかと思うよね」

「何それ」

「見てはいけないものが見えてるんじゃないかと…」

「なわけないでしょ」

きっと芥川くんは私と誰かを勘違いしているのだろうと決めつけ、またご飯を食べ始めた。

しばらくすると、また睡眠に入っていたからやっぱり勘違いだったのだと思う。テニス部からの視線はなんだか怖いと思う。
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