嫌いなとこ

「飲み物ってお茶でいい?」

お盆を片手に、部屋に入って尋ねる。

「お?おう」

そんな私には目を向けず、ニヤニヤと漫画を読みながら桃城は答えた。

そんな様子に、ムッとする。

確かに、お互いの家は行き慣れてるから、勝手にくつろいでることも、漫画読んでることもなんら問題ではないけど。

でも、私に興味がなさそうな、その返答が気に食わないんだ。

まるで、漫画を読みにこの部屋にきました、とでも言いたげな。

乱暴に机にお盆を置くと、携帯をとって、桃城の背中にもたれかかる。

なんだよ、と言葉を紡ぐための揺れを背中に感じながら、何でもと唇を動かした。

別に、つまらないわけじゃないし。

漫画に嫉妬したわけじゃないし。

そんなんじゃ、ないし。

少しむくれながらも、私は私で携帯をいじった。

それでも、たまに桃城が笑って背中が揺れることとか、前かがみになるせいで私まで後ろに倒れちゃうところとか、携帯をいじってても気になっちゃって。

それなのに、桃城は私がもたれかかってることも気にしずに漫画に集中しちゃってて。

やっぱり、つまらない。

トンっと軽く背中で桃城を押す。

つまんないんだけど。

気づいてよ、バカ。

今まで保っていた力加減を変えて、寄りかかってみたりする。

しばらくすると、ドンっと倍の力で背中を押された。

不意打ちに、私は倒れちゃって、桃城を睨む。

桃城の背中では、わかりやすいくらい肩が震えていた。

漫画で笑ってるのかって考えも頭をよぎるけど、違う。

「ちょっと…」

「悪りぃ、バカだなと思ってよ」

「バカじゃないし」

「じゃあ、アホか?」

「アホでもないし」

「じゃ、かまってちゃん」

ニヤニヤと振り返って言う。

気づいてとは思ったけど、やっぱり、バレてたらバレてたで嫌だ。

「かまってちゃんじゃない!」

「かまってほしいなら言えばいいだろー?」

「かまってほしくない」

頭に置かれた手をはらって、距離をとった。

その位置で、もう一度、携帯を開いた。

「ふーん?読み終わったのに?」

「……」

「あーあ、かまってやろうと思ったのになぁ」

わざとらしく、大声で言う。

挑発だって、そんなことはわかってるけど。

「残念、やっぱ漫画読もうかなぁ」

「桃城の馬鹿野郎!!!」

ドンっと、今度は真正面から背中にぶつかってやった。

またニヤニヤ笑ってるのが容易に想像できちゃって。

こういうところが大っ嫌いだ!

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