君と一緒なら

「なーに読んでるの?」

読んでいた本に影がさす。

私の読んでいた絵本に興味をもったようで、彼は開いたページを読んでいた。

「王子様の話?」

「うん。王子様がお姫様助ける話。昔読んでたなと思って」

「へー」

そう言って、私の前の席へと座った。

「でも俺は、王子様よりヒーローの方がいいな」

「千石くんは王子様の方が好きかと思ってた」

「え、何で?」

「女の子はお姫様だと思ってそうだし」

千石くんが困ったように笑った。

嫌味とか、そういうのじゃなかったけど、困らせちゃったのかもしれない。

「確かに、全員お姫様なんだけど、何て言うかな…。俺だけのお姫様を探したい!じゃ、ダメかな」

千石くんらしい理由に笑いが漏れる。

何だかんだ言っても、結局は一途なんだなって。

「無敵なヒーローってのはどう?」

「守ってくれるの?」

「名前ちゃんのことなら喜んで守るよ」

「そっか。無敵なら、千石くんが死ぬこともないからいいね」

「ヒーローは死なないよ!」

「そうだね」

「どんな強い悪役でも、俺が名前ちゃんを守るから」

「うん」

約束だと言うように、小指と小指を繋ぐ。

それが子供の頃に戻ったようで、『ヒーロー』に憧れていたころの昔を思い出した。

助けを求めたら現れてくれて、敵をコテンパンにやつけてくれる、無敵のヒーロー。

「もし俺が王子様でも、名前ちゃんがお姫様じゃないならいつでも探しに行くよ」

「千石くんが来るまでずっと待ってるよ」

「名前ちゃんがお姫様で、俺がヒーローだったら名前ちゃんのことさらいに行っちゃうかもな」

「ロミオとジュリエットみたいにならないといいね」

「大丈夫、俺は無敵だからね」

小指を繋いだまま、笑い合う。

私も、千石くんが迎えに来てくれるなら、無敵になれる気がした。

「ねぇ、名前ちゃん」

「ん?」

「名前ちゃんは、ヒーローか王子様かどっちがいい?」

「それが千石くんなら、どっちでもいいよ」

きっと、私の元に来てくれるだろうから。

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