顔に熱

早朝。


冷たい風が吹き付けて、1日の中でも一番寒い時間。

そんな時間に私は部室の前にいた。

自分でもバカだと思う。

すごく寒い。

手袋もマフラーもしてるのに。

さっきからくしゃみは止まらないし、鼻水も出てくるし、手は…冷たいな。

冷え性じゃなかったことが救いか。

まあ、なぜこんなことをしているかというのもアホらしい理由なんだけど。

「苗字さん?早いね」

「おはようございます」

私が挨拶をすると、おはよう、と朝っぱらなのに爽やかな笑顔で返してくれた。

「すごく寒そうだけど、大丈夫?」

「大石先輩が朝早いと聞いて待ってました。マネージャーは早く来ないとですし」

「いつから?」

「6時くらいからですかね。先生が門開けてくれて助かりました」

「バカじゃないのか!」

「うえっ!?」

いつもの優しそうな顔じゃなくて、顔にしわをよせて、大石先輩が怒った。

優しい人ほど怒ると怖いというのは本当らしい。

「あ、ごめん…とりあえず、中入って」

「すみません」

大石先輩に促されて部室に入る。

外と面しているから、そんなに暖かさは変わらないけど、風がない分寒さは和らいだ。

「はい。これ羽織ってるだけでも違うと思うから」

「え、レギュラージャージは…」

「大丈夫だから。俺、暖かい飲み物でも買ってくるね」

「すみません」

「次からは、こんなことしないように!ほら、その……風邪引かれたら困るからさ、俺が」

急いで部室からでていく大石先輩を見送って、ジャージに顔をうずめた。

もちろん、鼻水はつかないように。

匂いを嗅いでる、なんて…私は変態だな。

さっきまで寒かったはずなのに、顔を中心に熱が集まってきて、熱くなる。

マフラーとか、手袋とかコートとか、そんなものより、大石先輩のジャージが一番の防寒具です、なんて。

また顔に熱が集まった。

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