毎日毎日、与えられた事をひたすらにこなしていく。味気ないこの日々をいい加減、どうにかしてほしいものだ。 sweet my darling ザックス・フェア、今年で13歳を迎えようとしている彼は、商いをする中貴族の生まれ。本来なら学校へ通う年だが、彼の引っ込み思案な性格のせいか学校に馴染めず、家庭教師を雇い毎日習い事にいそしんでいた。 ある日、父のお客さんが家に商談にくることになった。その日はたまたま習い事がなく、ザックスは暇を持て余していた。普段なかなか遊ぶ機会のない彼。休みの日くらい遊びたいのだろう。 そうして遊びに夢中になっているうち、商談中の応接室に間違って入ってしまった。 「…ぁっ、ごめんなさい。遊んでたら、つい...」 あまり人に慣れていないせいもあり、焦って言葉がでてこないようだ。 そんなザックスに優しく声をかけてくれたのは、取引先のひとだった。 「いいんだ、別に。遊びたい年頃なんだ」 「すいません、うちの息子が。…ほら、顔をあげなさい。グレンさんに挨拶しないとだめだろう?」 父に言われたので挨拶をする。 「‥はじめまして。僕、ザックスっていいます。」 「ザックス君、いい名前だ。俯いてないでこっちを向いてごらん。」 そう言われ、はじめて顔を上げる。 「………!」 ザックスの目はくぎづけになる。 その目に映ったのはお客さん、グレンのその後ろ。 綺麗な銀髪を背中までのばし、長い刀を携えて、姿勢良く直立不動の人物。 その男にザックスはすっかり見惚れてしまった。 その視線に気づいたグレンは 「あぁ、彼かい?彼は私が雇った傭兵でね、腕を見込んで買ったのさ」 「よう、へい?」 聞き慣れない言葉に戸惑うが、すぐに父が、意味を教えてくれた。 「さ、もういいだろう。ザックス、他の部屋で遊んでいなさい」 いくら他の事に打ち込もうとしてもあの傭兵を忘れることができなくて。 その夜。話があると言い、ザックスは父の書斎に向かった。 「父様、お願いがあります。…僕に、今日の傭兵さんを買ってください!」 その言葉に飲んでいたコーヒーを喉に詰まらせる父。 「…急にどうしたんだ?お前に傭兵など必要ないだろう?」 家からあまりでないザックスなので返す言葉もない。 「ですがっ……なら!彼を、僕の執事にしてください!お小遣もプレゼントもいりませんから…!」 子供にできる最大限の誠意。 それを見せられた父は… 「そこまで言うのなら、グレンさんに口利きしてもいいが…決まったわけではないからな?」 「ありがとう!父様!」 prev│next ( 1 / 2 ) [back] |