彼奴を見つけたのは、しとしとと雨が降る冬の逢魔が時の事だった。何と無く立ち寄った神社、其の境内にぼうっと朧気に光る存在。銀色の髪をしとどに濡らし、深紅の瞳を滴を零す天に向けて。神秘的な幼子は、唯其処に佇んでいた。

「たかすぎ?」
「嗚呼」
 神社の境内で見つけた幼子は名を銀時と言った。数年前から神社に住み着いているらしく、どんな日でも俺が尋ねると必ず顔を出し、年相応の笑顔を浮かべて手招いてくる。今日は俺の名前を聞かれたので教えてやったら、覚束無い口調で繰り返した。

「ねえ、たかすぎ」
 その日の夕暮れ、そろそろ帰ろうかと腰を上げた時、銀時が俺の着物の裾を掴んで呟いた。彼の目線に合うように身体を屈めてどうした、と問えば。
「たかすぎは……おれのこと、わすれないで」
 俯いて震えながら言葉を紡ぐ銀色の幼子に内心疑問を感じながらも幼子の頭を撫でて口を開いた。
「大丈夫だ、安心しなァ。忘れやしねェよ」
 俺がそう答えてやれば、銀色は儚げに笑って。ありがとう、と消え入りそうな声を出した。


*/*/*


 朝になり、ひんやりとした空気に身震いしながら庭に続く障子を開ければ、案の定雪が降っていた。純粋なまでの白に、彼奴の髪を思い出す。雪が意外と深いから、銀色が居る神社まで行くのは難しいかもしれない。雪解けまで待つしか無い、か。そう思って障子を静かに閉めた。雪に紛れて銀色の幼子が此方をじっと見つめていた事に、俺は気付かなかった。



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