noname









それはまだ私がとても幼い頃。
きっと4、5歳くらいだったと思う。
飛行機に乗ってイタリアに来たんだ。


意味のわからない言葉に見慣れない人や物。
新しい環境に不安でいっぱいだった私がここへ来て最初に会ったのは、人の良さそうなおじさんだった。



とても大きなお城のような屋敷に引っ越してから、そこが消し炭となるまでにそう期間はかからなかった。



泣き叫ぶように私に逃げろと言ったお母さんお父さんとは、その後二度と会うことはなく。
逃がされ助けられ最初に会ったおじさん達と共に暮らすことになり早十余年。



私は当時通っていたマフィア学校で彼、そして彼等と出会った。




「おい!てめーらそこで何してる!授業サボってんじゃねえぞ悪ガキ共!」





「あぁ?うるせぇぞぉ。考査の結果だけ良けりゃ問題ねぇだろ、とっとと失せろぉ」



「てめーら2人は問題なくともソイツは問題しかねーだろーが!!」



「ひぃいっ?!」



ソイツ、とはテラスで椅子に腰掛ける私と銀髪の少年の前で尻餅をついている金髪の少年である。



「ほらディーノ、いつまで座り込んでるの。あんたがそんなんだからあたしまで文句言われるんだよ。」



「じゃあほっとけよ!!俺今日は授業受けてただろ!」



「はっ。昼寝ぶっこいてたがなぁ。」



へなちょこディーノ。そんな異名を持つ彼はこれでもキャバッローネファミリーの次期ボスとなる男。

運動音痴で成績も悪く、マフィアを嫌い自分の境遇を否定し続ける、そんな彼を人々は嘲り嫉み、また嘲罵した。




「大体なんで俺朔とスクアーロっていう二大悪に連れ出されたんだよ…碌に用事もねぇ癖にさ。」




「用事ならあるよ。スクアーロとの勝負に立ち会う人が欲しかったの。」




学校で有名な成績優秀血気盛んな2人の不良生徒がサボり中にバッタリ出くわし、学内に蔓延る噂を確かめる為にお互いの剣を交える、そんな歴史的場面にディーノは単位を犠牲に立ち会えると言うのだ「嬉しくないぞ!?」




結果は私が負けたがこの時強さ的にはほぼ互角。
私の方が立ち回りが良く、スクアーロの方が力が強かった。
スタミナ戦へと持ち越しになり、か弱い私の敗北。


私は、体は軽いがあまり力は強くない。なるべく体力温存しているものの持久力もそこまで高くない。

故に普段は近距離で剣、遠距離やリスク回避時等にハンドガンと使い分けて臨機応変に戦っている。





「弱えなりに努力してますってかぁ?
笑わせるぜぇ!こんなもんかぁ!」




「はぁ、はぁ、アンタ、あたしの攻撃防いで途中逃げ回りまくってた癖によく言うわ…!
マラソンは苦手なんだよ!ムカつく〜〜〜絶対克服してやる…!」




「おうおうその意気だぁ!もっとオレを楽しませろぉ!!!」




「お前ら実は仲良いだろ…?」




「あぁ、ディーノお疲れ。もう帰っていいよ」




後ろからくっそぉ〜だとかやるだけやったら用済みか!だとか誰かに聞かれたら誤解を招きそうな喚き声が聞こえるけど、今日はもう疲れた。帰って寝る。



けど、もうひと声、


「覚えてなさい鮫野郎!!!次に会ったが最後、腕の一本でも持って帰ってやるわ!!!」




自分自身への戒めも込めて、既に帰り始めてもう割と遠くにいるスクアーロへ叫ぶ。




「う"お"ぉい!!よぉーーく覚えとくぞおぉ!!!!じゃあなぁ!!!!!!」




すると自分の声よりも遥かに大音量で返事が来て、なんだか今日は2度負けた気がした。







ームカつきましたー




その後死ぬ程特訓した。


next
2020.05.01 Yuz



←|→
[back]