noname





控えめに言って同僚。

付け足すなら友人。



もう少し詳しく言うとファミリー。


彼とは普段から戯れ合いと言う名の喧嘩をするような仲でもある。

加えて彼は美しいしその見目も眼の保養となるので一緒の任務などは大変好ましい。


しかしながら、今まで彼を性的な対象として見た事は意外にもない。
というのも、割と長く一緒にはいるもののそんな表情を見た事もなく、寧ろボスに付き従い獲物を狩り尽くす事を至上の喜びとする一面から、彼は男専門なのだとすら思っていた。




それにしても…。







「覚悟は出来てんだろうなぁ?朔。」



「ちょ…やめ…」



「嫌でも覚えさせてやる」




「スク…や、だ…待って…」






部屋の其処だけぽっかりあいた家具の隙間。
追いやられて逃げ場を無くして、私の視界はスクアーロ一色。それはもう唇が触れ合いそうな距離で。



熱い吐息が、視線が、私を捕える。
頭上で義手によって束ねられた両腕はビクともしない。
スクアーロの匂いが嗅覚を刺激する為、目を閉じても意識してしまう。

いつも見ている景色より大分近くにある彼の存在が、慣れなくて恥ずかしくてまともに目を合わせる事も出来なかった。


戸惑いを隠せずいると、足の間に滑り込んだ彼の膝が偶に敏感な所を擦り上げて、囁くと言うには少し乱暴な台詞で耳元へと挑発する。


腰に回っていたはずの右手が厭らしい手つきでランジェリーの中へ滑り込んできてはそのままブラのホックを外された時には、いよいよ焦りが加速した。


この状況は理解出来ても、
迫る刺激も相まって、思考が、答えが、追いつかない。



まずスラっとしていても存外がっちりしていて私よりずっと大きなスクアーロだから、端から逃げられるという選択肢はない。


そもそも、拒絶する程嫌という訳でもなく、自由を許されている足で彼のモノを蹴るなどは以ての外なのだけど、それにしたって、ちょっと待って頂きたい。急な事すぎて、




さっきからドキドキが止まらないよ。








所でどうしてこんな事に?


まぁ、明白なんですけどね。そんなの。

我ながら馬鹿な事をしたものだわ、と今更思う。




ー答えを急ぐと碌な事がないー






任務から帰り、着替えるために服を脱げば自らの身体の本来の軽さに驚かされる。
元々部屋を整頓する予定を組んでいたけれど、新しい服を着てしまってはまた着替える羽目になるし、まず下着姿でいるのは非常に楽である。
いつ襲撃が来てもいいように構えるのが一流の暗殺者だけれど、この格好なら寧ろ動きやすくて丁度いいように思えた。





きっと、「テメー何て格好してやがるッ!もっと何か着ろぉ!!」とか、
「う"お"ぉい風邪引くぞ馬鹿なのかぁ?!」とか、
「汚ねぇもん見せんなぁ!大体テメー女だろうがぁ!!」とか、そういう反応があるだろう、と想像していた。


しかし現実は違う。




「…おい。んだその格好は。」


乱暴なノックの来客を迎えるのに扉を開ければ、一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに怖い顔になり、
予想してた反応の数十倍は低く静かな声で、彼は言った。





「テメー、オレを男だと思ってねぇのかぁ。」






…そして、冒頭に至る。







「朔、後で自分のした事を反省しとけぇ」



その一言を合図に、至近距離を保っていた唇が重なった。


腰の辺りを弄っていた手は腹を擽り、素肌を滑って膨らみへ到達する。


柔らかな胸の感触を楽しむように、マッサージするように、好き勝手触られる内に、何度となく敏感な部分が擦れる。


「は、固いぜぇ。満更でもねーんだなぁ?」


激しいキスの合間に吐息混じりで囁かれ、返答に詰まる。それは息が苦しいせいか、それとも熱に浮かされたせいか。


「そんな、の、そこ、触るから…んん」


一呼吸置いて答えるも、スクアーロは既に次の行動に移ろうとしていた。


息を荒くして性急にブラジャー毎ランジェリーをたくし上げられ、熱い舌でねっとりと直の刺激を受ければ、電流のように快楽で体が痺れ、声が抑えられない。


「はぁ、あ、ん!」


両手は解放され、空いた義手が腰へ回る。
手持ち無沙汰になった両手は、より刺激を欲して銀色の髪に縋った。


胸への刺激もそこそこに、リップ音を立てて唇を離すと抵抗する暇もなくショーツを降ろされる。


「ちょっと、立ったまま、やだ、」



嫌だなんて詭弁だ。
強引に進められるこの行為に興奮しているのはスクアーロだけじゃない。
その証明に、もう下はとろとろだった。
触らなくても、自分でも分かるくらいに。
もう、中が疼いて、入れて欲しくて堪らない。




下着を降ろすがままに跪くとスクアーロはそのまま長い舌を茂みの奥、柔肉の間に差し入れる。



「あ、あ、ゃ、はぁあ、ん!」



立ってるせいで陰唇からクリトリスまで全体が刺激を受け、膝がガクガクする程気持ちいい。
声が我慢出来ない。



「ね、もっ、イッちゃ、う…!」



その一言で更に強い刺激が私を襲う。スルッと中に入ってきた指がいい感じに動くから、そのまま絶頂を迎える。




「はっ、あ、んん、ん」



ビクビクと痙攣する体と乱れた呼吸を落ち着かせていると、ベルトを外す音が聞こえてくる。



コクリと、生唾を飲んだ。
早く、早く。


もう、堪んない。



目の前の光景がまるで最高級のドルチェのように思え、
少しずつ露わになるソレに、目眩さえした。


赤く熟れてテラテラと輝く先端に、質量のあるその全貌に、思わず期待が膨らむ。



準備が整えばどちらともなく素肌を密着させた。
片脚を持ち上げられ、先が宛てがわれる。


「入るぞぉ」



その一言を合図に、一気に奥まで圧迫感が貫く。



「あぁっ、や、だ…!!」


「こんだけ締め付けといて、やだはねぇだろぉ…ああ?」



刺激の強さに驚き口をついて出てしまった言葉に反応しながら、スクアーロは腰を掴み激しく律動する。



「オレにぐちゃぐちゃにされて感じてんだろーがぁ。テメーの中は、そう言ってるぜぇ」



返す言葉もなく、ただただ動きに合わせて喘ぐ。


「ハッ、はしたねぇなぁ?
テメーの事は、いつかどうかしてやりてえって思ってたんだぜ?」




「なぁ?朔。」


耳元で、官能的な低い声でそんな風に言われて、脳が揺れる感覚を覚えた。同時にぼんやりと疑問が浮かぶ。



「な、で…ん、そんな素振り、一度も…」



「あった筈だぁ」




「え?」




いつ?どこで?
そんな記憶私には無い。


答えないスクアーロにもう一度聞き返そうとするも、彼が激しく突くものだからそれは叶わなかった。




「はぁ、朔、中、出すぞぉ」


他の選択肢は与えられなかった。
以前母から護身用にと賜ったアフターピルがどうやら役に立ちそうだ。


そのままくちゅくちゅと舌を絡め蕩けるようなキスを甘受して、その内に息を詰めるスクアーロによって欲は放たれた。














その後は私の方がきっと我慢出来なかったのだと思う。そのままベッドで何度も身体を重ね、気付けば随分時間が経っていた。



激しい情欲も落ち着きを取り戻し、シーツの中、彼の銀色を指先で弄ぶ。


そういえば、と。
先ほどの疑問をぶつける。


「私の事、どうとかって…あれ何?」



全然気になる事は何もなかったのに。


「本気で言ってんなら鈍感にも程があるぞぉ」




顔合わせる度にしつこく話しかけたり、
わざわざ時間を合わせる為に任務を早く終わらせたり、
買えば良いものを借りたり、
はぁ、そうですか。そんなの気付かないよ。




「分かりづらいからそれ。もう。びっくりだよ」

そう言うと物凄く不機嫌な顔で「気付かねぇ方が悪い」なんて言いながらまた組み敷かれてしまう。



これではキリがない、朝が来てしまいそうだ。






けど今は、それでも良いかなと思えた。

だってこれからは、ゆっくりスクアーロの事を考えなくちゃならなそうだから。




2019.08.16 Yuz



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