Squalo








「…行って。…早くッッ!!!!!!」





どこへ行けると言うのか。
この馬鹿は。




「う"お"ぉい…
テメェを置いて…一人生き延びた所でオレは、この先の人生を無駄に、するぜぇ。」



「…っ!じゃあどうしろと…!!
どっちにしろ、片方が死ぬか両方死ぬか、じゃない…!」



朔は、息も絶え絶えに大粒の涙を流しつつも、潤んだ瞳で目の前をキッと睨み続けている。


今のこいつには果たしてわかっているのだろうか。




愛しい命と引き換えに得た粗末な時間なんて、ただ苦痛でしかないということ。
どうせなら。




「地獄まで付き合うぜぇ。
テメェとだったら…」




ーそっちの方が100億倍楽しめそうだ。




痛々しい唇を噛み締める朔は次に、美しく笑った。

「…そうね。きっと生きるよりも幸せな事だわ。」




そして二人同時に地面を蹴れば、退屈そうにしていた先方がふふふと笑う。
待っていたのは気まぐれか、これっぽっちの優しさか。こんなくだらない三文芝居を。


苔の生えた心中的心理を掲げて、敵わない相手へ無謀な攻撃をひたすら繰り返した。
倒す事、生き延びる事を目的としない、死ぬ為の攻めを、ひたすら。


もう何もかも麻痺してしまった頃に、見えた。
目が、合った。



「…ぁ、…で、な。朔、」


開いた唇の動きを追う。


何と、言ったの?
確かめようともがこうとした時、
その赤い色は世界を埋め尽くした。

次に、私の体から見えた時にはもう、自分がどこの誰かさえも、
分からなかった。





















ー光の溢れたこの世界は、一体何処なのだろう。


気が付けば、そこを歩く私がいる。
目の前には大きな大きな、くらい穴。

ふと、突然叩かれた肩の方へ目を遣る


見慣れた、懐かしい貴方は、


誰ですか?




美しい銀髪にこの光は似合わない。眩し過ぎる。

そう思ったので、その手を引いてまっくらな穴を目指しました。
こっちの方がきっと、
私達にはお似合いだと思ったから。





「分からないけど、貴方を愛してる。
きっと、ずっと一緒よね?」



「あぁ。今も、昔も。…これからもなぁ。」









ーfree fallー



何処までも深い業。
でも。貴方とならば、永遠だって。







2016.08.05 Yuz



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