Squalo


一周年記念。スクアーロ。











「…。…お前がウチに来てもうどんくらいだぁ」




「え?んー…去年の春過ぎ辺りに強制入隊させられたから、丁度一年前くらいじゃない?」




「そうかぁ。じゃあ一年記念で盛大に祝ってやらねぇとなぁ?」



任務先への移動として森を走り抜けている道中、いきなりスクアーロはそんなどうでもいい話題を振ってきたかと思ったら、次の瞬間不敵に笑った。



「何企んでるのよ。」




「それはコイツらを殺ってからの、お楽しみだぁ」



四方の木の陰に無数に潜んでいた敵雑魚が各々スクアーロへと襲いかかる。
それらを虫でも追い払うかのように剣撃で一掃すると、そいつは私に向き合った。



「大事な記念日だぁ、あの城はお前にくれてやる。存分に暴れてきやがれぇ!」



「はぁ?何考えてんの二人の任務でしょうこれ、一人で熟せる訳……てかあんたはどうすんのよ?」



「オレは他にやる事が出来た。後はお前の方で片付けとけぇ。」




オレが見込んだ唯一の女だぁ、お前ならやれる。そう言って肩を叩くと、あの馬鹿は去っていった。随分と高く買われているようだけど、真面目に任務に取り組んだ事がないような私一人に任せるとか本当馬鹿。盆暗。クソ野郎。帰ったら後ろから切り込んでやる。

と、一人で愚痴りながらも仕方ないので渋々目的地を目指す。



「あーもう面倒くさい。あんたら纏めて死刑よ、死刑。苛々するなぁ」



折角久々に二人で任務行けるってなってやる気が出ていたのに、スクアーロは私を置いてどっかに行っちゃうし、もうこれはターゲット以外でも私に刃向かってきた奴は総員処刑決定ね。



そんな感じで忍ぶこともせず派手に暴れていたけど、意外と任務はあっさり完了した。
なんでも適当に殺して回っていたらその中に標的が混ざっていたみたいで、肝心な目的の部屋は金庫に入った必要書類以外の収穫がゼロだった。



「はぁ、もう。一人だって終わらせてやったわよ、馬鹿スクアーロ」



未だにムカムカする気持ちを隠そうともせずに、アジトへ帰還する。



「ねぇボス、スクアーロは??」


「知るか。」



ボスに報告書を提出して行方を聞くも、ひと蹴りされた。まぁ、分かっていた事だけど。
なんだか段々と悲しくなってきて、素直に自分の部屋へと戻ろうと思い廊下を歩く。



自室へ着くと、ドアの隙間に手紙が挟まっているのが見えた。


「何これ?…此処まで来い…?」



開ければそれは印刷された簡易的なアジト内の地図と文字の切り抜きから作られた古風な脅迫状のようなものだった。
何故こんなものがこんなところに、しかも私に。



全く意味のわからないまま、むしゃくしゃしてた私はこの手紙の持ち主をぶちのめそうと地図上に星マークのついた場所を目指す。



「ここって…
談話室じゃない。


まさかこれスクアーロ…?いや、そんなまさかね。」


先ほどのあいつの態度と言い少し不審に思ったけど、こんな事をする奴ではない。うん。
そう一人で納得して恐る恐る扉を開ける。




ドカーーーン



そう、周囲が爆発する音が聞こえた。

私はそのまま戦闘態勢に入る。

しかし次にはパーン、と乾いた音と可愛らしいカラフルな…なにこれ、クラッカーの中身。



「おかえり〜、おめでとーう!ここに来て一年よーん!」


「…は?…はぁ?」


「ししし、さっきの手榴弾気に入ったっしょ?」



何故。入隊して一年経ったくらいでこんなに豪勢にお祝いするもの?いやいや有り得ない。アリエナイ。
そんな考えがぐるぐるする中、奥にいる銀色の馬鹿が目に入った。


私は怒りと喜びとで一目散に駆け寄り、鞘の入ったまま剣でそいつに斬りこむ。



「こんっのカスザメがぁ!!」



「なっ?!」



「本当は一緒に任務行きたかったのに…!!途中でどっか行っちゃって!こんなところにいて…何してんのよ、もう馬鹿…!」



「悪ぃ、こっちの準備すんのにお前だけ外に連れ出す必要があったんだぁ。だが一人だけ任務出して後のやつが残ってると不審に思われるからなぁ」



それで二人で行う任務だと言って途中まで来た後、私を行かせて自分は準備に戻ったという事だったらしい。



「嬉しいけど…でも何で?他のひとじゃそんな事した事ないでしょうに」




「あぁ。これをやる。」



そう言って私の手を取ってスクアーロが嵌めたのはブルーの宝石が輝くゴールドのリング。左手の薬指だ。



「婚前パーティーだぁ。」




「そういう事よ〜、おめでたいわねぇ〜!!」



「会場の盛り付け代はスクアーロに請求させてもらうよ」



「ししし。王子寿司食いたい」



「ぬぅ。ボスの御前で結婚などと浮かれよって、恥ずかしい奴らめ…!」



みんなが騒いでる中、ちゃっかりいつものお誕生日席にボスもいて、こんな個人的な行事に参加してくれてるボスは案外いい人なのかもしれない、と思った。
それより、




「ふふ。スクアーロ、私を幸せにしてくれるの?」



「あぁ"?…お、おう。」



耳まで朱に染めて、今更恥ずかしそうにそっぽを向く彼が、心から可愛らしいと、愛しいと思った。



「言っとくがなぁ!!オレより先に死ねると思うなぁ!!」



それはとっても遠回しな、“自身の命にかけてもお前を守る”という彼なりの誓い。




「臨むところよ!」




本当のところ心の中では、スクアーロ一人に死なせてなんかやらないと思っていたけれど、今は彼の顔を立ててあげようと思う。







だって、こんなに素敵なパーティーなんだものね。







2016.06.05 Yuz
clapから。



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