Squalo
「スクアーロはさ、未来って信じる?」
「…は?」
談話室で難しい顔をしていた朔から突然質問が投げかけられる。
「いや、この前ツナと会って話してたら、偶々その話になってね。
ツナは信じるって、みんなとまだまだ色んな事したいんだって言ってた。あたしはどうだろう…って考えたけど、その時は何故か分からなかった。
スクアーロは、どう思う?」
ヴァリアーの中で最も温和なこいつは並盛の連中とも仲がいい。
つか、そんなくだらねぇ世間話するくらい仲良しこよししてんのかぁ。
それより未来か。そんなもの……
「…未来なんてものは、考えたところで答えなんてありゃしねぇ。
ほっといたって迫るもんだからなぁ。
オレはただ、今を全力で貫くだけだぁ。」
そうオレが告げれば、朔は満足したように頷いた。
「…そっか。スクアーロらしいや。
うん。あたしは、未来なんてどうでもいい!」
「何故そうなる!!」
「だってねスクアーロ?
あたしは今の方が大切で、それよりも過去の記憶や思い出の方がもっと大切なんだ。」
伏せられたその瞳には、朔の大事な過去とやらが映っているような気がした。
いつでもどこか遠くを見つめているような気がしていたのは、どうやら気のせいではなかったらしい。
「過激な変化に富んだあたしの人生じゃ、未来なんて物凄く曖昧で朧げだから。
最終的に思い出して、美しかったと思えたらそれでいいの。」
「…本当、
何でテメーみたいな奴がこんなとこにいるんだろうなぁ。」
ヴァリアーのメンバーはこいつ一人を除いて、どいつもただただ血生臭くて汚ぇ。そんな中で、闇や汚れに塗れつつこんなにも輝けるものなのか。
「だが、そんな朔を好ましく思うぜぇ。
つえーのに変に脆く、その癖崇高な魂を秘めてやがる。」
実に魅力的だ。ー
そう言おうとして、やめた。
言うまでもない。
代わりに、抵抗の色を見せないその小さい唇へ口付けを一つ。
頬に添えた手から、熱を感じる。
真っ赤になる朔に対し、オレは堪えようのない気持ちを覚えた。
恐らくこれが愛おしい、ってやつなのだろう。
後悔しないうちに、未来が続いている間に、オレがこいつを幸せにしてやろうと思う。
2016.05.20 Yuz