幸せな贈り物

これの続き的な話。
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高尾和成、16歳の誕生日。
その日がいつなのかをその日の数日前に緑間の口から聞いた彼の先輩達は、バタバタケーキやらお菓子やらを準備して、そして来る11月21日、サプライズパーティーを開いた。最近なんとなく部が忙しいのが自分の誕生日の為だったなんて知らなかった高尾は、驚き、戸惑い、自分に向けられた愛情で胸をいっぱいにし、自分が生まれてきた日を祝ってくれる人がこんなにいる、そのことがこんなにも嬉しいものなのかとその幸せに浸った。



「楽しかったー!パーティー開いてくれるとか、マジ感激っ!明日からもっと頑張んなきゃなー」
「努力するのは当たり前のことなのだよ」
「分かってるってー。なんたって努力家なエース様の相棒だかんな!」
「茶化すな」
「褒めてんの!」

そんな幸せいっぱいのパーティーも終わり、いつもチャリアカーを停めている場所に二人で向かう。
緑間からの言葉はまだもらっていないが、高尾は自分の誕生日にいつも通り緑間の傍にいられるだけで幸せだ。パーティーの余韻を残した幸せを感じながら、高尾は緑間の隣を歩いた。
そしてチャリアカー置場に着き、恒例のじゃんけんをしようとした時、それを緑間が制した。一呼吸おいて緑間が口を開く。

「高尾、今日はお前の誕生日なのだよ」
「え、知ってるけど」

今までしてたのは何のパーティーだったんだよ、と、期待して待ったのに出てきた言葉はそんな言葉で、高尾は少し苦笑いをする。しかし緑間がいつも回りくどい言い方をするのを知っているので、黙って続きを促した。

「中学時代にもキセキの奴らに誕生日プレゼントやらをやったことはあったが、俺はどうもセンスが悪いみたいでな。やっても苦笑されるか爆笑されるかのどちらかだったのだよ。全く、紫原のようにお菓子をやっていれば喜ぶような簡単な奴らばかりだったらどんなにいいかと何度も思ったのだよ」

あまり思い出したくない記憶なのか、緑間は忌々しそうに語る。そんな緑間を見て高尾は吹き出しそうになるが、ここで笑ったら機嫌を損ねるのが目に見えているので必死に我慢した。
ふいに緑間が真剣な目で高尾を見る。本題に入るのだと理解して、高尾も緑間と目を合わせる。

「そして今回のお前の誕生日。随分と悩まされたのだよ。お前に何をあげたら喜んでくれるのか、と。好きな人の誕生日だ。誰よりも喜んでもらいたいからな」

好きな人、その単語に高尾が少し息を詰まらせた。そんな高尾を無視して緑間は続ける。

「お前が俺の事を好きなのは知っている。だから、俺が貰ったら嬉しいものをあげたら喜んでくれるんじゃないかと思い立って、俺がお前から貰いたいものを考えてみたのだよ」
「……真ちゃん」
「俺は、…俺は、やっぱりお前の未来が欲しい」
「真ちゃん止めてよ。その話はもう終わったでしょ」
「しかし俺はあれから何度考えてもお前のいない未来なんて考えられなかったのだよ」
「…なに?もしかしてだからお前に俺の未来をやるのだよとか言う訳?言っとくけど、真ちゃんの未来なんかいらないかんね」
「高尾」
「真ちゃんがしぶといのは知ってたけど、まだそんなことグジグジ考えてたなんてマジ興醒め。ほんとやめてくんねーかな。萎える」
「…それがお前の本心と知っているのなら元からわざわざ時間を割いてお前の事を考えたりしていないのだよ」
「じゃあ今後一切止めてくんね?」
「高尾、お前がそれが本心なのだと言い張るのなら」
「なんだよ」
「俺の目を見ろ」
「っ!」

緑間が高尾の肩を掴み、高尾の目と自分の目を合わせる。最初合わせられていた目線は、この話をし出した頃から次第に外れていって、今では合わせることを拒否するように空中をさ迷っていた。緑間が真剣な話をしているのに視線を合わせないなんて、なにか疚しいことがあるからに決まっている。普段ポーカーフェイスなのに、こういう時だけやたらと素直なのだ、この男は。

「そうやって俺を罵ることでお前は俺を忘れられるのか。そんな簡単な想いだったのか。そんな簡単な想いじゃないから、今お前は苦しんでるんじゃないのか」
「…っさい、なんでそんなこと言うんだよ…!」

高尾の目から、ボロボロと涙が流れ始める。耐えきれなくなって、高尾は緑間の胸に飛び込んだ。

「だから真ちゃん嫌いなんだよ!全部知ってるから!なんでもお見通しって顔してさあ!い、今までずっと耐えてきたのに!なんでお前はそう簡単に踏み込んでくんだよ!どんだけ唯我独尊だよ!」
「そんな唯我独尊の塊を好きになったのはお前なのだよ」
「唯我独尊の塊だって自覚してんなら自重を覚えろよぉ…」
「うるさい」

頬を伝う粒を舌で掬って目尻にキスをする。緑間は壊れやすいものを扱うように、高尾に優しく触れた。

「高尾、先ほどの話の続きだが」
「…仕方ねーから聞いてやるよ」
「…高尾の癖に生意気なのだよ…。まあいい、とにかく、俺はお前との未来以外考えられない、と言うのは話したな」
「…うん」
「お前は以前、俺とお前が付き合う事でお前が俺の未来を奪うと言った」
「…」
「何故だ」
「…何故って」
「それが俺には分からないのだよ。俺がお前と付き合う事で、俺の未来に何の支障が出るのだ」
「だって、…真ちゃん、絶対俺の事その内飽きるよ。絶対今俺好きなのなんてちょっとした気の迷いだって。長くて卒業まで持ったとして、大学別れたらどうすんの?真ちゃん格好いいから、すぐ彼女出来るよ。そんで大学卒業したらすぐ結婚するよ。そしたら、俺と付き合ってた事なんて汚点になる。同性で付き合うなんて、日本じゃ外国ほど受け入れられてねーんだから。将来の彼女さんに引かれたらどうすんの。将来の奥さんに引かれたら、」
「高尾」

泣き崩れそうに震えながら話していたのを遮られ、緑間の服を握りしめていた右手を、緑間の左手が包み込む。テーピング越しに体温が伝わってきて、再び高尾の目から涙が溢れた。

「お前は何の話をしているのだ」
「何の…って、お前のだよ」
「…はあ、くだらん。俺の将来の彼女も将来の奥さんも、いるとしたらお前なのだよ。何を言っているのだお前は」
「なっ…」

お前こそ何言ってんだ。高尾はそう言ってやりたかったが、あまりの驚きに言葉が出なかった。さらっと言っているが、これはプロポーズとも取れる言葉じゃないか?

「真ちゃん、あの、嬉しい言葉ではあるんだけど、なんていうか、そういうのって願望じゃん。叶うとは限らないじゃん」
「だから何を言っているのだお前は。願望じゃない。俺とお前の未来だ。さっきからずっとお前の未来が欲しいと言っているのに、お前は何を聞いているのだ」
「ごめんさっきから真ちゃんが言ってることが宇宙語に聞こえるんだ」

えっと、つまり。と、高尾は考える。

「ちょっと前に話した付き合う云々の話…あれ、付き合うは付き合うでも、結婚を前提に付き合うとかそういうマジな感じだったの…?」
「…?当たり前なのだよ。それ以外に何がある」
「何があるも何も…」

普通は高校生で、しかも男同士で結婚を前提に付き合ったりしねーよ…。そう思い、高尾はため息を付いた。どうやら、自分が考えていたことは杞憂だったらしい。
…しかし、

「あのさあ真ちゃん。人の気持ちってさ、変わっていくもんじゃん。だから今はその気でもいつ心変わりするかわかんねーし。だから言ったんだよ。真ちゃんの人生の汚点になるかもよって」
「それは、…俺も、随分考えたことなのだよ。前のあのとき、高尾のいない未来なんて考えられないなんて言ったが、少し無責任な言葉では無かったか、と」

そう言って緑間はふ、と笑った。予想外の笑顔に、高尾は少し戸惑う。

「しかし、高尾に言ったことに後悔は無かった。あれは、お前の事が好きだと、お前の隣にいつまでもいたいと、そう思って言った事だ」
「はは、真ちゃんちょーイケメン…」

緑間のこの言葉を聞いた後でも、高尾は笑顔に苦さを残した。そんな高尾を見て、緑間は大事にしている左手で、高尾の頬に触れた。
「高尾。確かに俺たちは同性だ。不安かもしれない。しかし、俺はお前を幸せにしたい。センスの無い贈り物かも知れないが、受け取っては貰えないだろうか」
「…でも、知らねーよ?」
「何がだ」
「後悔しても、知らねーよ?俺が真ちゃんの未来貰ったら、もう返さねーから。後悔したって、返さねーから」
「ふっ、構わないのだよ」

緑間が高尾を抱き締めると、少し置いて高尾も抱き締め返した。

「誕生日おめでとう、和成。お前が生まれてきた事に感謝するのだよ」
「…ありがと、真ちゃん」



(君から貰った、世界一幸せな贈り物)





Happybirthday! KAZUNARI










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高尾100%様に提出

と、いうことで高尾誕生日話でした。
…高尾には申し訳ないんだけど、これすごく急ピッチで上げた話だから後で修正するかも知れない…です…
ちょっとフライングだけど、高尾誕生日おめでとう!大好き!
急ピッチで上げましたがとりあえず、

・先輩たちに愛され高尾
・とにかく緑高がお互い大好きすぎる
・和成って呼ぶデレ緑間

が書けたので満足です。
「通じ合っても〜」を読み返したとき、すごく微妙な気持ちになったので幸せになった緑高書けて良かった。
緑高幸せであれ!











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