「あなたは、どうして」
聞こえた声に顔を上げる。そこには肩を上下させながら息を切らせる仲間の姿があって、どんな顔をしたらいいのか分からないままとりあえずの笑顔を見せれば、ひどく顔を歪められた。ああ、可愛い顔が台無しだ。
宿を抜け出した理由を、夜の街に蔓延る害虫を駆除していたんだと説明したところで、きみは悲しむだけなんだろう。なのに何故ついてきたんだ、ああほんとうに――気づかないふりをしておいてくれれば、元のままでいられたのにな。
「なにを笑っているのですか」
「何が?」
「しらばっくれようったってそうはいきません」
「参ったなあ」
「――あなたは!」
「モルジアナ」
被せた声と同時、魔装した剣をブン、と振る。あえて当たらないよう、目先を通るように目測した剣筋は、狙いどおりにモルジアナの鼻先を通った。
見開かれる彼女の瞳。僅かに身体を震わせたのを見て、笑う。何を。今更。
お前の中の俺はそんなにお綺麗だったのか?
「ア、リババ、さ」
「モルジアナ」
そんなわけ、ないだろ。
「手合わせ、願おう」
夜の空気が揺れた。