を振りかるための
ニュアル




よしよし、生徒会室には君一人。ぬいぬいやそらそらは用事でしばらく帰ってこないって言ってたから今がチャンスだ。
えぇと、ここを繋げて。あ、こっちも繋げて…。よし、完成!スイッチを入れるとウィーンって起動音。その音に君が振り向く。
うんうん。上手くいったぞー。

「翼君?新しい発明品が完成したの?」

「よくぞ聞いてくれた!これはぬいぬいやそらそらには内緒なんだけど、今年のハロウィンで使おうと思って作ったんだ!」

本当は機械を吊して降らせたいんだけど、そんなに天井が高くないから床にひっくり返して置いて、噴水みたいに出させることにした。
月子は機械を見て、爆発しないかどうか凄く心配そうだったけど、今回は大丈夫!いつもの俺とは違うのだー!
スイッチを入れるとポンポンと可愛らしい音と共に飛び出したのは…黄色、オレンジ、ピンク、紫、緑、水色…色とりどりの金平糖。初めはただただ驚いていた月子だったけど、飛び出したそれが何なのか分かった途端、飛び切りの笑顔をみせてくれた。

「凄い!翼君!!凄くキレイだね。」

小さな星の噴水みたいでキレイだね。なんて目を輝かせてはしゃぐ君が予想を超えるくらい可愛くて、やっぱりみんなに披露する前に見せてよかった。
ハロウィンの時じゃぬいぬいやそらそらは勿論、月子の側には怖いお兄さんや鳥の巣先輩もいるだろうし…。俺の発明で喜んでくれる月子を一人締めしたかった。
ぬぬ……。なんか俺ばっかり月子の事好きみたいだぞ?

「ねぇ、翼君。これって食べられるの?」

「もちろん!」

月子は食いしん坊だなー。なんて言葉を返しながら食べてみて?と促すと、嬉しそうに機械の近くに受け皿として置いておいたトレーの中に落ちた金平糖を拾い、「いただきます」って律儀にも挨拶してからぱくり。ぱくり。金平糖が月子の小さい口の中に次々と消えていく。
いいなー。なんて見てたら不意に口の中にころん。ふわって甘い味。

「ぬっ?」

「びっくりした?翼君がこっち向いて口開いてたから欲しいのかって思って。」

金平糖嫌いだったらごめんね。なんて謝らなくていいぞ。月子が俺の口に金平糖を入れてくれて嬉しかった。
でもおしい。欲しかったのは金平糖じゃなくて、それを食べてる月子なんだけどな。

「なぁ月子。」

「…どうしたの?」

自分でもびっくりするくらいの情けない声。俺の元気が無い事に気が付いた君は心配そうに俺を見る。
…どうしちゃったんだろ。俺は月子の笑顔が見たいのに、自分から月子の笑顔を消すような事して。そんな事がしたいんじゃないのに。

「…金平糖じゃなくて月子からのキスが欲しい。」

「えっ?」





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