家族日和と思いません?3

外は夜更けの真っ只中。静かな時間。

アルヴィンの腕を枕代わりにしてベッドに転がったレイアは天井に向かって手を伸ばした。
天井を掴む様に伸ばした指先は思っていた以上に気だるい感触。
力が全部抜け切ってしまったよう。

つい先程までアルヴィンと深く繋がり合っていたのだからそれも仕方のない事だった。
一度だけでなく、二度、三度…何度頭が真っ白になってしまっただろう。

「あっ…」

軽く身じろいた拍子に白く泡立った液体が内腿に流れ出た。

「どうした?」

さっきまで放心して静かだったレイアの上げた声がアルヴィンの気を引いた。
声自体は小さなものだったけれど、静かな夜にはよく響く。

激しさの後の静寂。気だるい幸福感。

「んっ…」

身体の向きを仰向けからアルヴィンの方へと向けた。
胸板にそっと頬を寄せながら上目使いで彼を見、からかう口調で言った。

「アルヴィン君のセーエキが流れ出てきて気持ち悪いなーって」

「うっ…わりぃ」

今日はアルヴィンにしては珍しい失敗をしてしまったため、軽口を返す余裕がない。

「そのままだと気持ちわりぃだろ?シャワー浴びてくるか?」

レイアの髪を撫でながら言う。

「シャワールーム行くまでの元気ないよ。身体だるい…」

「そっか…」



「あのさ…」

「ん?」

アルヴィンの目を真っ直ぐ見た。

「このままにしといて、もし、赤ちゃん出来たらアルヴィン困る?」

髪を撫でる指が止まる。

「いや…別に…、…」

言いよどむ。

少し寂しさが胸を駆け上がったけれど、
まぁ、仕方ないよね、とレイアは思い直す。
結婚話を避けるのと同じ様に、アルヴィンはレイアを抱きはするものの、日頃絶対に中に出すことはしない。
今日は珍しい失敗だった。

だから『困る』と言われたとしてもレイアとしては別段驚く事でもなかった。


ずっと傭兵として生きて来たから、家族というのを持ちたくないのかもしれないと。
レイアはそう解釈していた。
それでもレイアを大切に扱ってくれるし、彼女自身好きでアルヴィンの傍にいるのだからそれでいいと思っている。

勿論、全く寂しくないと言えば嘘になるけれど…。
だってレイアの夢は『幸せな家庭を築く事』だから…。


だるさの残る身体に力を入れ、ベッドに半身を起こした。
アルヴィンに微笑い掛ける。努めて軽い口調で言った。

「やっぱ困っちゃうよねー?よし、頑張ってシャワールームまでいってく、」

身体が再びベッドに引き戻された。

「る、ぅ?」

ぎゅっとアルヴィンに抱き締められている。

「レイアは、レイアは嫌じゃないのか―?」

「へ?」

「もし、俺との子供が出来ても困らないのか?」

「私が?困るわけないじゃんか!何でそう思うの?」

アルヴィンを見上げる。少し照れたようなアルヴィン。

「お前さんまだ若いから、他にやりたい事とか一杯あるんじゃねーかなって思ってさ」

目が合った。信じられないくらい優しい目。

「そん時に結婚してたり、子供居たりしたら色々制限されんだろ。だから…」

あぁ、もしかして結婚話をずっと避けてたのって…。

「せめてレイアが成人するまで、待とうと思ってたんだが…」

かなり恥ずかしそうに言うアルヴィンは、レイアの目に凄く可愛く見えた。
でもその可愛い顔はすぐに隠れて、

「ホントは、エッチするのも我慢しようかと思ってたんだけどー」

ニヤリと笑う。何時もの飄々とした顔。

「レイアちゃんがあまりにもやらしーので我慢できませんでしたー」

なんて事を言う。

「はぁ?私のどこがやらしーっていうの?やらしーのはアルヴィンだよ!!いっつもエッチな事ばっかり考えてるくせに!!」

「何?お前さん自覚ないのかよ あの媚びた顔は大概だぞ?すっげーやらしーのに」

「嘘!!絶対嘘ー!!」

「嘘じゃありませーん」

「嘘だよ!だってアルヴィンは『嘘つき』だもん」

そんな言葉のやり取りを何度か繰り返し、二人は一頻り、じゃれ合った。

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