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その4 対決!華のFC


体育館裏にて女の闘い。


*****


日吉の手加減の”て”もない特訓の翌日、
乳酸のたまりまくった体で登校し靴箱を空けるとそこには…

「…………」

たっぷり30秒はフリーズ。

「安積ちゃん、おはよ〜!!」
「!!」

バタン!!!
慌てて靴箱を閉じる。
振り返るとエンジェルヘアーの可愛い先輩。

「お、おはようございます芥川先輩」
「ジローでいいって〜」

紙一重なスキンシップを朝から炸裂のジロー先輩。
今朝も後ろから抱きつかれております。

(でも…)

ジロー先輩のフワフワの髪が頬にあたって…し、幸せ。
すみません…悪用しませんので、髪の毛一本いただけないでしょうか。
宝物にします。
今日という何でもない日を特別にするためにどうか、どうか一本…

「ねえ、靴箱どうかしたの?」
「え!」

一本拝借しようと伸ばした手を引っ込める。
濁りのないピュアなジロー先輩の視線が私の靴箱の扉へと注がれている。
嫌な汗が一気に噴き出て目が泳ぐ。

「い、い〜え??」
「そう??」
「は、はい。」

氷帝のエンジェルの眼差しはまっすぐで、直視できないのが悔しい。

「何かあったらいつでも相談してね、安積ちゃん!!」
「ジロー先輩…」
「オレ、安積ちゃんの味方だからね!」

グッと親指を突き出してウィンクをくれた。
可愛すぎて目からハートがこぼれ落ちちゃうわ。

「あ、ありがとうございます」
「じゃ!」

最後にペロッと私のお尻を撫でて、エンジェルスマイルで去っていくジロー先輩…

「触り逃げですよ。」

あんなにナチュラルにお尻を触れるなんて、あんな可愛い顔して。
やっぱりあの人危険だわ…

「さて…」

ジロー先輩の姿が完全に見えなくなったのを確認して、恐る恐る靴箱を開ける。
そこには…

一枚のティッシュの上に置かれた…

「かりんとう。」

まっぎらわし〜〜〜〜んだよっ!!!!!!

超あせった!超あせったわよ!!
そりゃ思わず閉めちゃうっつーの!!
猫か犬か何か知らんがアレだと思ったわ!
こんなの見られて勘違いでもされたら、乙女として一貫の終わりだっつーの!

…なるほど、これが嫌がらせか…

洒落たことしてくれるじゃないの。
こんなことくらいで私がびびるとでも思ったのかしら。
天下の全国美少年調査連盟をなめてもらっちゃ困るわ。
こちとら、このくらいの嫌がらせ転入してくる前から想定済みですことよ。

人の気配を探る…

今、私の後ろで一人…左隣の靴箱の裏に…三人?
突き刺すような視線を感じる…ファンクラブの連中か。

「ふん、ぬるいわ。」

靴箱の中のかりんとうを掴んで、頬張る。
バリバリバリバリ!バリバリバリバリ!!!

「ふはははははははは!!」

かみ砕きながら自然と笑いがこみ上げてきた。
女子たちからの妬みと嫌がらせ、これこそイケメン集団の紅一点になった美少女の宿命!
盛り上がってきたじゃないの、調子出てきたわ!
笑いとともに飲み下し、私は嫌がらせをエネルギーに変える。

「ふ〜」

一息ついて上靴を取り出す。
と、何かが足元にパサリと落ちた。

「お?」

上靴の上にのっていたらしいそれは白い封筒で、表には赤い文字でこう書かれていた。



”果たし状”



****



「で?」

跡部の眉間に皺が刻まれる。

「だ〜か〜ら〜!安積ちゃんがボコボコにされるんだ〜!」

部室に入るなり意味不明のことばかり話すジロー。
ずっとこの調子で要領を得ない。
跡部は足にまとわりついてくるジローを手で振り払う。

「安積が靴箱から”かりんとう”とかいう菓子を取り出して食べたところまではわかったが」
「それが一番わかんねぇよ。」

宍戸が突っ込むと鳳が隣でうなずいた。
昼休み、昨日に引き続きレギュラーが召集され緊急ミーティング。
ただ、今日は沙穂ちゃんと見張り番の岳人が出席していない。
俺は言いたいことが伝わらず焦るジローをなだめた。

「とりあえず、落ち着こうやジロー」
「うん…」
「いきなり”マネージャーがFCに殺される”なんてメールが入ってきたらビックリするやんか。」

授業中にいきなりそんなメールが入ってきて、驚いた俺たちは、マネージャーとクラスが隣の日吉に確認を入れた。
すぐに日吉から”残念ながら生きてますよ”と返事が返ってきたので、とりあえずは一安心したのだった。

「もう一回、順を追って話してみて。」

ジローは俺にうなずき、ゆっくりと話し出す。

「…今朝、安積ちゃんに挨拶した時様子が変だったから」
「今日に限ったことじゃねぇだろ。」

と、跡部。
ジローはかまわず続ける。

「俺、教室に行くフリして安積ちゃんのこと見張ってたんだ。そしたら、すごい怖い顔して安積ちゃんが靴箱の中睨んでて…」

目じりを指で吊り上げて、沙穂ちゃんの顔を再現するジロー。

「背後にいるオレにものすごい殺気を放った後、靴箱からかりんとうを取り出して食べたんだ」
「いや、どう考えてもそのくだりが一番の謎だろ。」

宍戸がうるさいがスルーして、俺は続きを促す。

「それから?」
「安積ちゃんの靴箱の中からこれが…」

ジローがポケットからしわくちゃの封筒を取り出す。
時代錯誤な文字が飛び込んできた。

「果たし…状?」

こんなもん、絶滅寸前の少年漫画アイテムやん。初めて見た。
帰国子女の跡部は特に衝撃もないらしく、ジローに尋ねた。

「この、足跡は?」
「安積ちゃんが…」
「ああ…」

怒り狂った沙穂ちゃんが、これを踏んずけまくる姿を容易に想像できた。

「よこせ」

俺から封筒をひったくった跡部は中身を確認する。
素早く文字を追う青い目に、思わず尋ねた。

「何て書いてあるん?」
「…フン。」

差し出された便せんに目を走らせる。
そこには、これまた昭和の漫画で使い古された文章が。

”放課後、体育館裏まで来られたし。

           華のファンクラブ”

「またベタな呼び出し分やなぁ。」
「ボコボコにされちゃうよ〜!!」

ジローが泣き叫ぶ。それを面倒くさそうに横目で見る宍戸。

「まだそうと決まったわけじゃねえだろ。」
「でも!女子が体育館裏に女子を呼び出すって言ったらボコボコにするしかないじゃんか!少女漫画で見たもん!」
「そ、そうなのか?女子ってそうなのか?」

週刊少年ジャンプが愛読書の宍戸が真剣な表情で訊いてくる。
いや、四半世紀前くらいの少女漫画のイメージやろ、それ。
でも…

「まあ…ボコボコにされるとまでは言わんけど、相手の人数が人数やからな。」

ぐるっと囲まれて一人脅えるマネージャーを想像してみる…

「…300対1じゃ分が悪すぎるやろ。俺でも300人の女の子に取り囲まれて睨まれたら、さすがに身の危険感じるわ。」

シンとその場が静まった。

「安積さん…」

鳳がポツリと呟く。

「どうして俺たちに相談してくれないんだろう…。」

一瞬シンと静かになる。

「そりゃ…」

と宍戸が口を開いて。

「ね」

日吉が頬杖をついて。

「跡部が」

ジローが軽くにらみながら。

「自分の身は自分で守れとか言うたからやろ。」

俺はため息交じりに。

「…ウス。」

最後に樺地がうなずいた。
そして、全員の視線が部長に集中する。
跡部は腕を組んで、小さく鼻を鳴らした。

「野郎だったら別だが…」

宍戸が言う。

「女子なんだからさ、やっぱり俺たちがフォローいれてやるべきだと思うぜ。」



間。



「なんか宍戸の発言が昨日より成長してる。先輩後輩やなくて、男は女の子を守ったらなアカンってカッコいい発言にレベルアップした。」
「うるせえぞ、忍足!」
「いやぁ、男気あってかっこええで。」
「っるせえ!目が笑ってるんだよ!」

顔を真っ赤にして怒鳴る宍戸だったが、相変わらず腕を組んで座ったままの跡部を見て
一呼吸置き、

「で、どーすんだよ。」

と、言った。
視線を受け、跡部は静かに口を開く。

「あいつが女だろうが男だろうが関係ねぇ。部員は部員だ。」

宍戸と俺は耳を疑った。

「じゃあ、このまま放置かよ。」
「そりゃあ…アカンで跡部。」

あの子が榊監督のスパイだろうと何だろうと、見て見ぬふりはアカン。

「……激ダサだな。」

部室の出口へと向かう宍戸。

「跡部が動かねぇんなら俺が行く。」
「え…」
「うちのマネに手ぇ出すなって教室一つずつ回るんだよ!」
「って全教室?」

俺が尋ねると、宍戸はガリガリと頭をかいた。

「仕方ねえだろ、FCの奴らの顔なんて覚えてねぇんだから!」
「だからって…」

昼休みの教室にそんな不審者が乱入してきたら途中で止められんのがオチやで。
宍戸の背中を追いかけて、鳳が立ち上がった。

「俺も付き合います。このまま放っておけないです。」

一直線な先輩後輩コンビはうなずき合って、ドアノブに手をかけた。

「俺も行く!安積ちゃんの味方だもん!!」
「ウス。」

ジローと樺地まで立ち上がった。
もう一人、俺の横をすり抜けて無言で出口に向かう男がいた。

「日吉、お前も行くん?」

不機嫌な顔をした後輩は振り返って小さくため息をついた。

「あいつ、センスゼロですよ。あんなへっぴり腰で身を守れるとは思えませんので。」

昨日は嫌々稽古つけてたくせに。
何やかんや言うても、最後は助けてやるんやな。

「ほな、俺も行こかな。」

俺も立ち上がって宍戸たちの元へ向かう。

「手分けすれば昼休み中に全教室回れるやろ。俺、FCの子の顔ちらほら覚えてるし。」
「…ったく。どいつもこいつも…」

俺の足を止めたのはあの男の声だった。
振り返ると、ヤツは頬杖をついて俺たちを睨んでいた。

「俺様の話を最後まで聞かねぇ」
「跡部…」
「お前らが教室回ってピーピー言ったところで何になる?」
「んだと…?」

噛み付いてしまいそうな顔で宍戸が振り返った。
が、跡部はまるで気にしていない様子でふんぞり返って座っている。

「俺様は誰だ?」

跡部と樺地以外の全員が”は?”と口を開ける。

「俺様を誰だと思ってるって言ったんだ。」
「あ、跡部?」
「そうだ。氷帝学園テニス部200人の頂点に立つ、跡部景吾様だろうが。」

跡部はゆっくりと立ち上がる。
口の端に笑みをくっつけてはいるが目が笑っていない。

「俺様以外の声に誰が耳をかす?」

目が、怒ってる…

「部長は俺だ。安積の入部を許可したのも俺だ。」
「あ、跡部…」
「俺様が受理した入部届に文句があるなら聞いてやろうじゃねぇか。」

跡部は”果たし状”をぐしゃりと握りつぶす。

「雌ネコ300人、俺様が相手してやるぜ。」

目がちっとも笑っていない跡部の顔を見て、
俺達は…
FCの女の子たちをどうやって守ってやるか考えた。

バタン!!

「た、大変だ!」

乱暴に扉を開け、部室に飛び込んできたのは岳人。

「安積がっ!FCの連中に連れていかれた!!」
「は!?」
「呼び出しは放課後やろ?」

岳人は呼吸を整えながらうなづいた。

「そうなんだけど、それが…カフェテリアで安積がいきなり”先制攻撃しかないわね”って呟いたかと思ったら…」
「はあ?」
「『FCだかなんだか知らないけど、かかってこいや〜!!』って暴れだして…」

平成の世では見なくなった”ちゃぶ台返し”を再現する岳人。
うちの新人マネージャーは、昭和の頑固親父と同じ暴れ方をしたらしい。

「沙穂ちゃん、何でそんなこと…」
「どうも安積がイライラしてるなぁとは思ってたんだけど、安積と連れの子以外、FCの女子連中ばっかりだったみたいで…。」
「カフェテリア中?全員っ!?」
「うん。昼飯食ってる安積を全員がジロジロ見てた。」

360度ぐるり取り囲まれ、食事をしている沙穂ちゃんを思い浮かべる…

「…辛抱たまらんくなってキレてもたんやろなぁ…。」
「で?」

頭痛がするのか、跡部がこめかみを押さえながら続きを促す。

「ブチギレたFCの子達が安積を引きずって行った。」

や、やばいやん…

「で、岳人、どこに連れて行ったかわかる?」
「たぶん…体育館裏だと思う。」
「跡部…」

俺達の視線を受けて、跡部は一度大きくため息をつくと

「行くぞ」

と、出口に向かった。



*****



「ふざけんじゃないわよ!」

最前列にいる偉そうな女に突き飛ばされて体育館の壁にドンと激突した。
私の目の前には総勢300人の華のFC。

「調子のってんじゃないの、あんた。」

ヒロインをいびる意地悪女が言うであろうセリフトップ5のセリフを吐き、私の顔をぺちぺちと叩く別の女。
私はその手と、頬にへばりついた蕎麦を振り払った。

「触んないで。」

その蕎麦だらけの手で。
そう蕎麦だらけの…

「っぷ!」

華のFCたちの姿を見て、思わずふき出してしまう。

「何笑ってんのよ!」
「だって全身蕎麦まみれなんだもん…くくく!」
「誰のせいだと思ってるのよ!あんたのせいでしょうが!」

髪や顔や制服に蕎麦がはり付いた彼女たちは顔を真っ赤にして怒り出す。

「今日だってあんたに話をしておきたかったから呼び出しただけなんだからね。」
「いきなりあんたが暴れだすからややこしくなってるのよ。」
「話ぃ? 私には話すことなんてなにもないわよ。」

にらむ私なんてお構いなしに、氷帝男子テニス部ファンクラブ『華のFC』たちは話を続ける。

「いい?男テニレギュラー陣は皆の共有財産よ?」
「誰かが独り占めしてはいけないの!」
「従って、抜け駆け禁止!」
「マネージャーなんて言語道断!」
「我が氷帝学園女子暗黙のルールがあるの!」

暗黙のルール?頭上でクエスチョンマークを飛ばしていると、
最前列の幹部らしき女生徒が胸を張りいきなり声を張り上げた。

「華のFC、淑女の第五か条!」

幹部女生徒の声を合図にFC達は”淑女の五か条”なるものを暗唱し始める。

「1、無断でレギュラーの半径1メートル以内に近づくべからず!」
「2、レギュラーに話しかける時は必ず二名以上で!」
「3、応援は列を乱さず、所定の位置で心をこめて応援すること!」
「4、レギュラーを呼ぶ時は”様”または”君”づけで!」
「5、応援グッズはウチワのみ!許可なく写真を使用してはいけない!」

唱え終わったFC達が、どや顔で見てきたので…指をさして笑ってやった。

「笑うな〜!!」
「駄目だわ…話が通じないわよこの子。」
「頭が悪いのかしら…理解してもらえると思ったのに…。」

今ので、理解してもらえると思ってたことがもうお笑いなんだけど。
あと、この子たちがめちゃくちゃ悪い奴らではないことは分かった。
しゃがみ込んで笑う私を見下ろし、幹部女生徒は仁王立ち。

「単刀直入に言うわ。マネを辞めて。」

………は?

「マネを?」
「そう。一人でもルールを守らない子がいると困るのよ。」
「今までみんな我慢してきたのに、いきなりやってきて規律を乱さないで!」

300人の痛いくらいの視線が私に集中している。
敵意、嫉妬…突き刺すように私を睨んでいる。

ああ…

「何とか言いなさいよ!」

偉そうな幹部女生徒がまた私の肩を押す
なんて…

「なんて…」

押された肩を抱きしめて笑った。

「気持ちいいの…」
「はあっ!?」

恍惚の表情を浮かべる私から、女生徒たちが一斉に距離をとった。
私は突き刺さる視線を全身に受け止めてゾクゾク震える。

「あんた達が今私に向けている視線は何?」

この子たちが私に向けている視線、そう、それは…

「嫉妬ね!」
「な、何言ってるのこの子…??」
「私は今300人分の妬みを買っているのね!!最高!盛り上がってきたじゃない!」
「ちょっと…」
「さあ!もっとわたしをいじめなさい!妬みなさい!!」

ああ、気持ちがいい!!

「そうよね!私、美少女だし(ステータス異常おこしてるけど)、あの男テニのマネージャーだし!」
「この子、やっぱり頭が悪いの?」
「みんな私がうらやましいのね!」

最高じゃない、この状況!
これぞイケメンモテ男子集団のマネージャーになった美少女の宿命!

「ぎゃははははははは!最高じゃー!!!うらやめ、うらやめ!我こそが美少女マネージャーであるぞ!」


*****


植え込みの陰に身を潜めていた俺たちは出るに出られなくなっていた。

「…み、見てみ。」
「ああ…300人が引いてるぜ。」

そう言った宍戸の表情もドン引き。
あれから急いで体育館裏まで駆けつけた俺達は、奇妙な振り付けで”淑女の五か条”を暗唱するFCにびびり、
タイミングを逃して物陰からこっそり見守っていた。
そして今、体育館裏には我が男子テニス部マネージャーの高笑いが響いている。
…まるで魔王のようやな、この笑い声。

「誰だよボコボコにされるとか言った奴…」

宍戸がジローをにらむ、にらまれた本人は口笛を吹いてしらばっくれていた。
ジリジリとうちのマネージャーから離れていくFCの子たちの姿が気になった。

「それにしても…FCの子らなんで蕎麦まみれなん?」

髪の毛や服に蕎麦がこびりついている…カフェテリアで一部始終を見ていた岳人に尋ねた。

「あ〜…先制攻撃仕掛けた安積が熱湯につかった蕎麦をザルで投げつけてたからな〜」

そ、そりゃ…

「そりゃキレて連れていかれるわ。」
「いや〜ホントそれだけですんでよかったよ。普通、その場で袋叩きにあうぜ。」
「そう考えるとさ…」

宍戸が呆然と立ちすくんでいるFCの子達を見つめながら言う。

「それでも話し合いで解決しようとしたFCの奴らってさ…いいヤツらだよな。」
「ホンマやな…。」
「それに比べてよ、うちのマネージャーはよ…」

黙り込む宍戸と俺。
そして日吉が言わなくてもいいことを言った。

「あいつを心配した俺達がバカでしたね。」
「………………。」

モゴモゴ口ごもる俺と宍戸の隣で立ち上がる影。

「あ、跡部」

沙穂ちゃんを完全に狩りの対象として睨みつけている跡部。

「あかんで、一応女の子やから…」

俺がそういい終わるより先に飛び出した跡部は、その0・5秒後、マネージャーの首根っこを掴み上げた。
捕らえられたマネージャーの顔色が青ざめる。

「っぎゃ!跡部!」
「随分とご機嫌じゃねぇか、ケモノ?」
「ど、どうしてここに…」
「入部早々トラブルばっかり起こしやがって…」

跡部は振り返り300人の雌ネコたちと対峙する。

「こいつを男テニで引き受けると決めたのは俺だ。今後、この俺様がこいつを責任を持って管理する!だからいいか!?」

女生徒たちにアツアツの蕎麦を投げつけ、カフェテリアで暴れまわったマネージャーの首根っこをしっかり掴み、
怯える華のFC会員300人へ、氷の王様は言い放つ。

「てめぇら二度とこいつに関わるな!ロクな事ねぇぞ!」
「あ…跡部様〜〜〜!!!」
「かっこいい〜〜!!」

その後、30分間拍手と跡部コールが体育館裏に響き渡ったのは言うまでもない。

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