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今日は土曜日、つまりは休日だ。

ここしばらく眞魔国にいたから地球で過ごす休日は久々だ。まぁ、あっちに何日いようがこっちではものの数分なので、この感慨深さを口に出すことは出来ないのだが。

ちなみに私、土方サクラはここ動物園に来ております。

え?一人でかって?なわけ、ないであろう!同じクラスの相前宗助と一緒だ。



…――みなさん、お気づきであろうか…。

あのにっくき藍染惣右介と同姓同名なのだ。漢字は違うが。幸か不幸か、性格も全然違う。ナルシストでもなく、メガネでもなく、ちゃんと空気が読めるヤツである。



「次は、パンダを見に行こう」

『ん?もうここはよいのか?』


そんな彼と動物園に来たのは、彼が写真部で今度コンテストに出すらしく「被写体探しの旅!」中なのである。

私は小学校低学年以来の動物園が懐かしくて、宗助に誘われ内心ウキウキでこの日を臨んだ。


「うん。あんまりグッと来ないし、何よりヘビはちょっとね……」

『…そう、か』


確かにヘビは、嫌いな人が多いしな。私は自身の中に玄武がいるからむしろ好きなのだが、やはりこヤツも嫌悪するタイプか。

周りにもいないな、ヘビ好きなヤツって。思い浮かぶのは……某忍者アニメの伊賀崎孫兵ぐらいか…彼女の名は「ジュンコ」だったはず。


――そう言えば……眞魔国にはヘビっているのだろうかー…。

次、コンラッドに会ったら聞いてみよう。


『パンダ、生で見たことなどないから楽しみだったのだ! 宗助もいい写真が撮れるとよいな』

「うん」


日差しが強い中ゆったり歩く。もちろん宗助はシャッターチャンスを見逃さぬよう集中しているので会話は少なめ。それにしても…暑いな。

日焼け対策に帽子をかぶって来たけど、じりじり肌が攻撃を受けている。

しかしこう暑いと、ミンミン鳴いているセミにまでイライラしてしまう、と毎年思ってしまうのだが……私だけだろうか?


――そう言えば……眞魔国にはセミっているのだろうかー…。

今度コンラッドに聞いてみよう。あれ?最終的に思考がコンラッドにいきついてないか?

いかん。頭がやられてきているっ!そのうち、日射病になる証拠に違いない。お茶でも買ってこよう――と意識を浮上しったところで、宗助が撮影から戻ってきた。


『どうだったのだ?』

「んー…ぼちぼちかな。いくつか候補を決めてその中から選んで行くから、なんともね」

『そう言えば水分取らなくて大丈夫か? 日差しが熱いから日射病に……、』

「サクラさん…」 


言葉を遮られて小首を傾げると、何処からともなく聞き覚えのある声が聴こえた。


「あ、あれ?サクラじゃん??」

「おや?ホントだ、土方さんだね」



呼ばれた方向に視線を向けると、最近仲良くなった渋谷有利と……誰だっけ…あ、村田健だ!村田がいた。


「おーい、サクラー!!」

「好きですっ!!!!」

『えっ?』


完璧に意識が村田に向いていたので何が起こったか分からなった。


「ずっと好きでした!返事は…今度でいいから!今日は、告げるつもりはなかったんだけど…いや、ゴメンっ!!今日は僕、帰るね。じゃあ明後日また学校で!」


彼、宗助はノンストップでそれだけ言ってユーリ達にお辞儀をしたのち、走り去って行った。


『……』

「……」

「……」

『……』


――気 ま ず い!!

一人残され、居心地の悪い空気を感じながら、そっと見遣ればユーリに視線を逸らされた。酷い。


「いや〜びっくりしたよ。生で人の告白聞いちゃった☆土方さんモテるね〜」


その空気を壊したのはやはりと言うべきか、村田健であった。


『あああ、ああれ…告白?ってか用事につき合わせといて先に帰るなどと…有り得ぬっっ!!!あの、たわけめっ!』

「あ、フっちゃうの?でも今日デートするくらい仲はいいんでしょ?」

『!はっ!?これってデートだったのか!!?』


今、漫画だったら私のこのお状態はまさに「ガ――ン」である。


「っ、サクラっ!…サクラにはコンラッドがいるんだからダメだよ!!」


きっと思考の渦に巻き込まれていたであろうユーリが、我に返って慌てて近づいてきた。


『あ、おいっ!』

「うわっ」


ちょうど近づいてきたユーリと近くにいた村田がぶつかって、ユーリは「何でそんなところにあるのーー!!!」と叫びたくなるくらいに不自然にベンチのちかくにあったバケツの上にこけた。


『おい、ふたりとも大丈夫か!?』

「メガネ、メガネ!」


村田はメガネが飛んではずれただけで、ユーリはバケツに入っていたのであろう、水浸しになっていた。


「わっ!!!こーれーはーー!――サクラっ!」

『えっ?』


何かに気づいたユーリに腕を取られ視界がぐるりと回った。

これは…いわゆる……勝手知ったるスターツアーズ、略してスタツア。


『(ユーリよ…ゆくなら人を巻き込むな!!)』


心の中で悪態をつきながら水の中に身を投じた。





 □■□■□■□



『っ、ゴホっゴホっっあー』

「ゴホッ、…あー……何でこう…毎回毎回突然に、しかも水で!!」

『…ホントになっ!!!今日は何か運がなさすぎるではないかっ!!暑いし、動物園に一日付き合ったのに置いて行かれるわ、あげくっ水浸しっっっ!!』


ユーリと水に濡れたまま二人で仲良く愚痴を言う。


「はっ!?そうだった!!サクラっ一緒にいた男は誰なのっ!?なんでデートしてんだよー浮気かっ!?」


っと確実にヴォルフラムの影響だろうセリフと共に詰め寄られた。

しかし、断じてデートなどではないっ!誤解である。


『おお落ち着かんか!ユーリ』


あーなんと答えるべきか…ユーリを宥めていると――…


「ほ〜なにやら興味深い話をされていますね」


背後から背筋が寒くなるほど地を這った声が聞こえた。


「……」

『……』


地球組二人で固まった。まさにピッキーンな状態である。

振り返ると…ヤ ツ が い た!!

思わず現実逃避しながら『ちっ違うぞ? 誤解だっ!遊んだだけなのだっ!!』、火に油な弁明をはかる。


「サクラ…それって浮気がバレた夫のセリフだよ……」

『なっ!アレをデートと言うならば、ユーリだってデートしていただろう!!』

「はぁぁ〜ぁ?デートじゃないっ!村田は男だって!!」

「なにっ!?ユーリお前はまた浮気したのかっ!!! 村田って誰だっっ!」

「『!!!??』」


――いたのかヴォルフラム…。

矛先をユーリに変えたらヴォルフラムが会話に参戦してきて、この場はカオス化してきた。


「聞いているのかっ!?お前はボクというモノがいながらっ!!!」

「いや〜…」

「俺も詳しく聞きたいですね」

『だからな…違うと言っておろう!!』


ヴォルフラムはキャンキャン喚き、コンラッドは爽やかな笑みで…しかし目が笑っていない表情で責めてくる。

この魔族似てねー三兄弟……時として、いや?意外に中身は似ている三兄弟と化する。

恐ろしい事態である。





『婚約など一種の間違いだったろうが…』

「だよな…あんな方法が求婚になるとか……」

『あぁ……あれにはカルチャーショックを受けたな…』

「ビンタだぜ?ビンタっ!笑うに笑えねぇーよ」

「陛下、サクラ様、聞こえていますよ?」


ユーリとぼそぼそと愚痴り合っていたら、コンラッドに敬称で呼ばれ、ヴォルフラムは――…、


「ユーリぃぃぃぃぃ!!」


般若の如くこちらに向かってくる。


「『ひぃっっっ!』」


――ちょっと今すぐ地球に帰してえぇぇ〜!!!!

魔王陛下と漆黒の姫の、悲鳴が眞王廟に響く。






その後二人が無事に地球に帰れたのかは謎である。




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