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1.【事の発端は】





確かあれは――…五歳くらいだったと思う。

思うと、曖昧な表現になってしまうのは、自分が随分と幼かったから、記憶が鮮明ではない為に靄がかかって上手く思い出せないからだ。


『おにーちゃん、おけがしてるーだいじょうぶ?』


従兄弟の、はたけカカシが仕事で他国に行くとかで、カカシと共に私も連れて行ってもらったのは覚えている。

その仕事が何だったのかは詳しく知らないが、自分を連れて行ったくらいだ、たいして難しい任務ではなかったのだろう。

カカシが任務で離れている間、私は知らない国の知らない街で、とある少年と出会った。


「!っ、なに?……子供?」


街と言っても――…あの時、私は迷子になっていたような気がする。なにせ知らない街だったし、当てもなくぶらぶらと歩いていたから、迷子になっても可笑しくはなかった。

薄暗い建物と建物の間で、泣きそうになった時、カカシが任務で帰って来たときのような――…鉄の匂いがして、気になって誘われるようにその方向に足を進めたら、その少年が腹から血を流していたのだ。


「近付かないでくれる?下手に近付くと、殺すよ」

『すっごい、血がでてるー』

「………ちょっと訊いてるの?」

『ミントが、なおしてあげりゅー』



なんかその少年が物騒な事を呟いていたような気がしたが、当時の私は気にすることなく、覚えたての治療を施した。

今思えば、一般人にチャクラでの治療は避けた方がいいのだけれど――…私達忍者の正体がバレるのだから、隠しておいた方がいい…と、まあ当時の幼かった私がそんな事を考える頭が備わっているはずもなく。

覚えたての術を自慢げに披露したのだ。


「この街の人?」

『ちがうよーこにょはのさとだよー』

「こにょは?」

『ミントはねーしにょびなの』



警戒していた少年は、私に治療されてみるみると傷が塞がるのを見て、瞬きさせていた。あまり表情が変わらないようだったから、驚いていたのかもしれないけど。

これが少年との出会いだったのだ。が、これでサヨナラではなく、私達はその日から数日間、出会った路地裏で落ち合って他愛もない話をしていた……と思う。




『なまえー?ミントはミントだよ』


私は、カカシが任務を終わらせてくれないと木の葉に帰れなかったから、毎日暇だったので、その少年と会うのを楽しみにしていたような気がする。


「俺は名字を聞いたんだけど」

『イルミは、きれーな、かみのけしてるねっ!うらやましー』

「…話題が変わったね。俺はミントの髪の方が綺麗だと思う」

『ミントは、イルミの黒いかみのけがいいー。すてきー』

「……俺はミントの銀色の方が素敵だと思うよ」



あの頃は…“はたけ”の一族が、自分とカカシしかいなくて、好奇の眼差しで見られることが多かったから、幼いながらに銀髪が嫌いだった。

それに対して、彼は黒髪で羨ましかった。

私にそう言われた少年――イルミは、猫目をきょとんとさせて、私の銀髪の方が素敵だとか言うから納得がいかなくて、私は頬を膨らませるのだ。


『ミントは、イルミの(かみのけ)がすきー』

「ぇ?ミントは俺が好きなの?」

『うん!きれーだもん』

「じゃあ、俺のお嫁さんにしてあげるよ」

『ん、およめしゃん??』

「うん。お嫁さん」



全く意味が判っていなかった当時の私は、簡単に頷いた。

まー幼い頃の過ちと言いますか、結婚する?うん!みたいな…大人になったら忘れるような幼き約束だったし、成長した今となっては相手の顔も思い出せないし、ああーこんな事があったなーくらいの思い出だ。

何回か会って、遊んでもらったその少年とは、約束をした次の日には、カカシが任務を終え私もカカシと共に木の葉へと帰ったので、会う事もなかったのだが――…。

ま、相手のことをたいして詳しくも知らないので、もう二度と会う事もないだろう。






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