序章は大体が過去話か説明文になりがち




人々の笑顔で賑わっていた江戸は、二十年前突如として現れた天人により――…長閑な町の風景も、晴れ渡っていた空も、全て天人に奪われた。

幕府は降伏し天人の言いなりとなり、外来人を排除しよう頑張っていた攘夷志士達は粛清され彼等の姿も、表舞台から消えた。

そう、“表舞台”から。

天人が我が物顔で江戸を練り歩く光景が当たり前になった世の中になっても、攘夷の思想の元、廃刀令が出てる中、刀を持つ侍が後を絶えない。

そこで彼等…反乱分子を即時処分する対テロ用特殊部隊――武装警察“真選組”が、作られた。



――真選組。

田舎から出て来た侍ばかりを集めて、形成された特殊部隊。

松平公により託された近藤勲を局長として、局長を支える副長に土方十四朗、その下に一番隊から十番隊まで隊が存在し一つの隊に約十人以下の少人数で構成されている。

戦闘員の他、監察方や勘定方、会計方などもあり――…真選組の隊士達に恐れられているのが、“鬼の副長”と言われている土方十四朗だ。

目付きの悪いまるでチンピラのような彼の名と顔は、江戸の住民に知れ渡っている。

誰からも怖れられている彼には、対になる存在がいる。もう一人の副長、“天使の副長”と慕われている山南雛夜だ。腹黒な幹部の中で唯一の優しさを持つ彼女を、隊士達は唯一の真選組の良心だとひそかに囁いているのは、彼女は知らない。

雨と鞭を使い分けるように、彼と彼女は正反対だった。

視線だけで殺せそうな眼光の土方十四朗と、包み込むような優しげな山南雛夜。彼がいるから彼女の優しさが顕著に現れ、彼女がいるから彼の厳しさが隊士を突き刺す。

隊士達にとって二人の副長は、どちらもなくてはならない存在。



家族のように賑やかな真選組を、雛夜もまた大切にしていたけれど――…。

平成の世で育ったとある女性が、死を迎え、平和な記憶を持ったままこの江戸に生れ落ち、自分が知る歴史と似ているようで似ていない世界に戸惑いながらも、剣の道を究め、女の身でありながら真選組副長になった――…なんて、彼等は知らない。彼女以外誰も知らない。

今日も今日とて、頭脳戦は彼に任せ、山南雛夜の副長としての一日が始まるのだった。





続く。


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