序章
待て、
待ってッ!
――お願いだッ!間に合えッ!!
『っ、一護ッ!!』
全てがスローモーションに見えて。
間に合ったと安堵した瞬間、体に衝撃を受けた。
――痛い筈なのに何も感じなくて――…。
誰かが、己の名を叫んでいるのが聞こえたが、返事が出来なくて。口から血が伝っているのが自分でも判った。
「いやぁぁぁぁぁ!サクラぁぁぁ!!!!!」
「サクラっ!!」
「そんなっ」
「サクラッサクラ!サクラっっっ!!!!」
――嗚呼…一護…の、声がする…。間に合ったみたいで、善かった。
霞む視界の端でオレンジの髪を捉え、私は口角を上げた。
『っあ、ぁ』
今までありがとう。聞こえているか判らぬが――……
皆に会えて幸せでした。
――ありがとう――…。
私は、重くなる瞼に従って、意識を闇に沈めた。
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