【マ王×コナン】ネタ帳より。
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「お前…サクラか」
『……まじか』
――…どうしてこうなったのだー!!
私、土方サクラは前世の――死神として生きていた記憶を持ったまま、この地球にて魔族として産まれた。
眞魔国で生を受けたのは善いのだが…前々世で読んだマ王シリーズの世界だと思ったのに、何故か眞魔国は地球に存在していて――私は知っている情報と違って酷く困惑した。
眞魔国はどの国よりも権力がある。――嗚呼…この世界も私がおる事で、知らぬ世界になったのだな〜と開き直って、前向きに生きる事早数十年。
ふと己は気付いたのだ。
前々世では途中で生を終え、前世は死神として生きていたから現世に無縁で。
今世では、戦争が終わってからは平和に城での生活で――…学生生活を送っておらぬのだ。花の女子高校生に憧れる。
眞魔国におっては…執務に追われて、まともには学生生活を送れぬ。送れたとしても――…途中で、過保護な臣下達に城へと引き戻されるであろう。…無念!!
――だがしか〜し。
『私は…諦めぬ!!』
と、意気揚々と――…眞魔国を離れて、日本へと降り立った。不法侵入はしておらぬよー。日本の知り合いにお忍びでと頼んで、眞魔国では出国しておらぬようにちょちょいと細工したりして。
バレたら叱られるが…まあ善い。バレたらバレた時である。その時どうしようか考えようぞ。
彼らもまさか己が眞魔国を離れるとは思っておらぬかったのだろう。
弟と、妹を置いてきたのは心苦しいが……帝丹高校に入学して早一年とちょっと過ぎ――…今では私は高校二年生である。
『ふっふふ〜ん』
その日は日曜日で、朝から天気が善い日であった。故に、私も朝からテンションが高く、洗濯をしたり部屋の掃除をしたりしていた。
『蘭たちデート楽しんでおるのだろうか』
不意に、こちらで出来た親友――毛利蘭と、その幼馴染であり高校生探偵の工藤新一を脳裏に浮かべる。
実は、蘭は空手を嗜んでおり…この前の大会で優勝した、そのお祝いに工藤の驕りでトロピカルランドに行く約束をしていたのだ。
三人で行こうって話だったが……どう見ても相思相愛な二人の邪魔はしたくないので、トロピカルランドには行きたかったが…今回は遠慮した。
「サクラも行こう?」
『いや…遠慮しておくよ』
「サクラも行こうぜ、何で俺がコイツと二人でなんか…」
「なによ、文句あるの?」
「い、いえ」
空手で強い蘭が拳を握るのを目の前で見ると、迫力ものだった。 思わず工藤君と二人で仲良く遠い目で現実逃避しそうになった事は、まだ新しい記憶である。
犠牲になった電柱は、見なかった事にした。
『今度は、結城とレタスと一緒にゆけたら善いな〜』
――…今度メールしてみよう。
日本に来てからは、臣下達と連絡は取ってはおらぬが――…弟と妹と、ユーリとはまめに連絡を取り合っておる。携帯電話は実に便利である。コッヒーもかたなしだ。
因みに、未だ私が日本で憧れの女子高校生活を送っておるとは…コンラッド達は全く気付いておらぬのだとか。
結城もレタスも、寂しがっておったし…今日にでも日本に誘ってみよう。もちろんオリーヴにも内緒で。
『ぬししっ』
でも、その前に…。
大会で頑張った蘭の為に、お祝いのちょっとしたプレゼントを用意すべく午後は、少し前から目を付けていた雑貨屋さんに行こうと決めていた。
――何を買おうかな。な〜んて、浮かれておったのが事の発端か。
それとも――…目的の雑貨屋さんの前の通りで、黒づくめの男二人を目撃して、あの二人は何かあるな…と尾行したのが事の発端なのか。
運が悪かったと思いたい。
問題に首を突っ込む癖――そう癖が働いたのだ。別に工藤みたいに犯罪撲滅!みたいな信念は私にはない。ユーリと同じく首を突っ込みたくなる性格なだけだ。
『工藤ッ!?』
「――サクラ?おめぇ何でここに…」
『しぃ〜。私はアイツ等を追って来たのだ。一度見失ったのだが……あれ?もう一人おらぬぞ』
「ぇ…」
ドンッ
『っ!!!』
長髪の男と体格のいい男を追って、何故かトロピカルランドに入って行ったので…チケットを買っておる間に見失い、やっと見つけたと思ったら工藤がいて。
工藤の横からあやつ等を覗き見たら、そこには知らぬ男性と体格のいい男が取引を――…私が追って来た男が一人おらぬではないかと、工藤に意識が向いている間、油断した。
背後から、長髪の男に鉄パイプで殴られた。
「サクラっ!!」
『(油断した…)』
薄れゆく意識の中で――…工藤の焦った声を聴いた。
己の失態に、これは玄武に後で扱かれるなーなど自嘲して、何処か遠くで当たり前だろと小馬鹿にされる声も聴こえた気がした。
次に目を覚ました時には―――……
「だ〜からッ!俺は高校二年生だって言ってんだろ!!」
私は、子供特有の高い声で、目を覚ました訳であるが…。
目を覚まして、状況を把握する癖も、無意識にしたのに、私は目の前で起きてる出来事を理解出来なかった。…否、理解したくなどなかった。
室内には、警官が何人かいて、まあそれは善い、想定内であるから。
だが…その警官と言い争っておる子供―――…そうその子供が問題である。若干記憶よりも遥かに幼いが、見た事がある顔に、覚えのある気配。この気配は――…
『おい、貴様…工藤か』
己から出た声は、これまた子供特有の…昔よく発しておった甲高い声音。
この男の子は、自分が高校生だと叫んでおった。
『……』
警官達、やけに身長が高いヤツらばかりであるな…とか思っておったが……目の前で、私を見て目を丸くしておる男の子――もとい工藤を一瞥して口を引き攣らせた。
そして――…冒頭に戻る。
「お前…サクラか」
『……まじか』
悲しいかな…、探偵の性として非現実的な光景に否定して頭を振ってる工藤と違って、私は…赤い悪魔のお蔭で、非現実的な出来事には免疫があるのだ。
まだ私をサクラと認めたくない工藤に近づいて、己の姿を見てみろと促した。
またも目を丸くした工藤の横で――私は、己の故郷、眞魔国へと思いを馳せた。
『(これは…やっかいな事になってしまったな)』
頭の片隅で、己の婚約者の姿も脳裏に浮かべて―――…私は重い溜息を吐いた。
―――土方サクラ。
出身地;眞魔国。歳;ピー歳。在学;帝丹高校二年。
_____ただ今より、六歳児になりました。
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