Clap
拍手有難うございます。
拍手御例文もしばらく更新していなかったのですが、毎日少しずつ拍手をいただいていて嬉しかったです。本当に有難うございます。
クリス先輩メインなのに拍手は、またもやクリス先輩じゃなかったです。すみません。
受験生なヒロインと純さんです。
では改めまして。拍手有難うございました。
インフルエンザの流行時期ですので、どうぞお身体に気を付けてください。
*****
点数低かった方が、何か奢りな。
なんて笑って言うその人に、私は自信満々で勝負を挑んだ。そして、まさかの惨敗。
何で?どうして?だって私の方が今まで成績良かったじゃないか。
「俺だって必死なんだよ。バーカ」
笑う純君。そりゃあ受験生だもの、皆必死だろうさ。でもまさか、ここまで伸びてきているとは思いもしなかった。
きっとどうしても行きたい大学があるんだろう。
私は諦めて負けを認め、講習後の道を純君とコンビニに向かって歩き出した。
あーあ、こんなはずじゃ無かったのになぁ。私が想像していた結末は、私が勝って駅前のおいしい冬限定ケーキセットを奢ってもらう、というものだったのに。
それを話せば、「あそこの店高いだろ!勝って良かった」なんて、苦笑されてしまった。高いだけあって美味しいんだよ、このやろう。
純君は何が食べたいのかなぁ、なんて頭の中で所持金と合わせて考えていたら、早くも目的のコンビニに着いてしまった。
「さぁ、何を奢ってほしいんですか?コンビニスイーツ?」
「んー、新商品出てるしそれも良いな。でも寒いし、やっぱこれだろ」
そう言って指差したのは、什器に入ったほかほかの肉まんたち。お値段なんと120円前後。
ほんとにこれで良いのかと呆気に取られていると、純君はどれにしようか少し悩んでからさっさとレジに並び、特性なんちゃら肉まんを頼んでいた。それからもう1つ、あんまんを頼んで、勝手に会計を済ませてしまった。
「ちょっと、私の奢りじゃないの?」
「うるせーよ。女子に奢ってもらうなんてカッコわりぃだろ」
じゃあ何であんな賭け事始めたんだろう。しかもちゃっかり私の分のあんまんも奢ってくれちゃって。これじゃあどっちが勝ったんだか、わかんない。
コンビニを出て、ほかほかのあんまんを手渡されると同時に、帰り道は危ないから送っていくと言われた。模試の話とかもしたかったし素直に言葉に甘えて送ってもらった。
こないだの模試は難しかったとか、今一番危ない教科は何だとかを話ながら歩く。純君は第一志望にまだまだ及ばずらしいけど、野球とか、その他もろもろのために死に物狂いで勉強をしているらしい。
それは応援したいことなのだけど、正直私はちょっとがっかりしていた。純君とは気が付けば三年間同じクラスだったし、仲の良い友達の一人にもなっていた。それに、私は純君が好きだった。彼は三年間ずっと野球漬けの高校生活で、その一生懸命な姿をみたら『好き』なんて言えなかったのだけど。
それが別々の大学に進学して、会えなくなってしまうんだなぁと思うと寂しくなってしまう。受験勉強は大変だけど、こうやってお互いに励まし合いながら一緒に勉強したりする日がずっと続けばいい、なんてことも考えてしまう事も多々あった。
けど、それはどうしようもないことで、どう足掻いたって卒業はやってくるのだから振り切って進むしかないんだ。
「それにしても、すっかり寒くなったね」
「そうだな。もうすぐ雪も降るんじゃねえか?」
何気なく切り出した話に、純君は空を見上げて答えた。
「そっか。早く手袋とか出さなきゃだね」
「まだ出してなかったのか」
「うん」
頷けば、思い出したように手が冷たく感じた。さっきまで温かいあんまんを持っていたはずなのに、冷たい風に晒された手はもう冷たくなってしまっている。まぁ、私が冷え性という事もあるのだけど。
ブレザーの袖口から覗くカーディガンの袖を引っ張って伸ばし、なんとか手を隠そうとするけれども、どうにも上手くいかない。さっさと手袋でもマフラーでも出して準備しておけば良かったと思った。
「どうした?」
「え、いや、大丈夫」
「手ぇ寒いのか」
「ちょっと。でもちょっとだから大丈夫」
言えば、純君は歩くのを止めて急に私の手を掴んだ。
「オラ、手かせよ」
少し乱暴な言葉で言われて戸惑っていると、そのまま私の手を引いてまた歩き出す。いったい何が起こったのか、少しの間理解できなくて、ただただ私は手を引かれた。
これはどういう状況なのだろう。純君が私の手を掴んでいる。私は純君に手を掴まれてる。温かい大きな手で。
二歩、三歩と歩けば段々状況を理解してきて、それと同時にじわじわと熱が顔に集中し始めた。どうしよう、私今、純君に手を掴まれてるんだ。
「ああ、あ、あの、純君」
「さっき肉まん持ってたから、あったけぇんだよ」
「え?う、うん?」
「手袋ぐらい持って歩けよな」
「うん」
「頑張れよ、受験勉強」
「う、うん。純君も…頑張れ」
「ったりめぇだボケ。お前と同じ大学行きてぇんだからな」
早口で言われた言葉に、どきりとした。
聞き間違いかもしれない。少しだけ強く握られた手の感触と、後ろから見える耳たぶが赤くなっている事で淡い期待を抱いてしまったのは、私にも同じ気持ちがあるからだろうか。
もしかしたら寒いだけなのかも。でも、でも、と言う気持ちが、私の手を震えさせる。
掴まれた手にそっと指を絡めれば、とくん、と心臓が胸の内で鳴り響いた。
繋いだ手は、きっとそこから私の気持ちを伝えてしまうかもしれない。それでもつないだこの手は離したくはないと思ってしまった。
トップへお戻りの際は
こちらです