二次創作
殺したいほど憎いのに
「あんた、本当に可哀相な子よぅ? 留弗夫」
姉貴は俺を壁に何度も打ち付けた後、嫌らしい微笑みを浮かべたまま、もう一度俺の頬を叩いて床に転がす。
「無能のあんたなんか誰も愛してくれないわぁ。お父様も、兄さんも。勿論お母様もねぇ?」
泣きじゃくる俺を無理矢理起こして、姉貴はまだじんじんと痛む俺の頬を両手で抑え付ける。
まだ、終わらない。逃げられない。兄貴に虐められた姉貴の鬱憤が晴れるまで、俺は逆らうことも許されず何度でも痛め付けられる。まるで、玩具のように。
──ふと、閉じた瞼に心地良い重みを感じた。細くて柔らかい、姉貴の指の腹が、ゆっくりと涙の跡を辿って行くのがわかる。
「でもねぇ、留弗夫ぅ。……安心していいのよぅ?」
ああ、と俺は胸を撫で下ろした。やっと、解放される。目を開ければそこには、さっきの鬼のような姉貴ではないもう一人の姉貴が、小悪魔みたいに可愛らしく微笑しながら甘く囁くのだ。
「あんたがこの家でどれほど役に立たなくて嫌われてても、……私はあんたを愛してあげる。姉さんだけは、あんたの側にいて、大切に大切に可愛がってあげるわぁ」
姉貴の華やかな、とろけそうな香りに包まれて、俺は妙に安心してしまう。抱きしめてくれる姉貴の胸に縋り付いて俺は声を張り上げながら泣いた。
「愛してる、留弗夫。私の可愛い弟」
ああ、
殺したいほど憎いのに何故か胸が暖まるよ
幼くて非力だった俺には姉のこの言葉だけが救いだったんだ。
(完全に憎ませてもくれないなんて、酷いじゃねえか、姉さん)
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