サイケデリックドリームス02。
俺が生まれたときには、既に旧モデルの兄には津軽がいて。
俺は一人だった。
さびしかったのだ。
俺が、悪いんじゃない。
「貴方のようにふしだらな方、見ているだけで虫酸が走ります」
俺の後に現れた日々也が、最初に告げた一言がこれだった。
その時は、偶然、津軽だけがマスターに呼び出されていて不在で――俺が、兄に慰めて欲しくて懇願していたのだ。
魔が差したとしか言いようがなかった。
そんな最低な出会いだったのに、俺は、気がつけば日々也に惹かれていた。
後から来た者同士だとか、お互いにまだ相手がいないだとか、そういう勝手な仲間意識みたいなものがあったのかもしれない。
ただ、柔らかな物腰や誰にでも丁寧に接する姿や、時折見せる微笑みが、俺は、とても好きだった。
けれど素直になれない性格が祟って、俺は日々也に憎まれ口しかたたけずにいた。
「誰にもいい顔しやがって、信用できねェんだよ」
違う。そんなことが言いたいんじゃない。
(俺だけを、見て欲しい)
日々也は一瞬だけ顔の表情を無くしたが、すぐに苦笑した。
「そうですか、それは残念ですね……どうやら貴方とは気が合わないようです」
兄と津軽が会話しているのを少し離れたところから、ぼんやりと眺めている時のことだった。
「……いいなぁ」
その羨望は、どちらに対してなのか。あるいは二人に対してなのか。無意識に言葉が口からこぼれていた。
「何がですか?」
突然後ろから声をかけて、驚きながら振り向くと、そこには日々也が立っていた。
「あ……」
何か言いたくても言えず、無意味に口から音を漏らすしかできない俺を他所に、日々也は俺の後ろの方――兄と津軽の様子を、目を細めながらみていた。
「ああ、あの二人ですか」
しばらくお互いに無言のままでいたが、やっと日々也が俺を見ると、ふっと冷たい笑みを浮かべて告げた。
「貴方も、津軽さんを見習ったらどうですか?」
ムスカリ
2010/01/16
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