【昼休み】

 今日の昼休みは正直食いすぎた、と静雄は考えていた。
 弁当はいつもと同じ量だったのだが、別のクラスで調理実習があり、どういうわけか何人かの女子が静雄に作ったお菓子をくれたので、律儀にそれを全て平らげたのだった。
 ちなみに貰った当の本人は理由を全くわかっておらず、勇気を振り絞った乙女達にとっては浮かばれない話だ。とはいえ自宅に戻ってから弟に諭され、これまた律儀にお礼を返したものだから、非常に喜ばしい結果となったのはまた別の話。
「うっぷ……」
(あー、やべ。まじで食いすぎた……)
 手で口元を押さえながら、お腹の辺りをさすっていると、嫌な気配がした。
「シーズーちゃん」
 臨也だ。
「んだよ……今、てめぇに構ってる気分じゃねぇんだよ……どっか行け、うぜぇ」
 ああうぜぇうぜぇと適当にないがしろにしていると、しばらくこちらを見ていた臨也が突然顔を近づけると、大声で矢継ぎ早に喋りだした。
「あれ、シズちゃんどうしたの?顔色悪いけど気持ち悪いの?ああ、もしかしてつわり?ごめんね俺がこの前無理しちゃったから」
「ああ?」
 突然わけのわからないことを喋り始めたので、正直静雄は混乱していた。
 ちなみに周囲の生徒達も混乱している。ざわめきつつも、触らぬ神に祟り無しとばかりに誰一人として口出しはしない。
 そのまま勢いで臨也は静雄の手をそっと握りしめ、真剣な眼差しで目を見つめながら大きめの声ではっきりと告げた。
「……俺、責任とるよ!」
 ガタッ、と教室のどこかで音がした。誰かが椅子ごと倒れたらしい。
「はぁ?」
 まったくもって意味がわからない。
 そうこうしているうちに予鈴が鳴り、臨也は自分の教室へと戻っていった。教室内に残された生徒達は未だにざわめいている。
「あれ〜、皆どうしちゃったの?」
 戻ってきた新羅に静雄が事の次第を説明すると、彼はわかりやすくこう答えた。
「ああ、それはあれだね。静雄が妊娠したから臨也がその相手として責任を取るっていうことだね。つまり、臨也にからかわれたんだよ。」

 その日の午後は、一部の教室が半壊する騒ぎとなり――生徒達は体育館で授業を行い、騒ぎの原因となった生徒達は反省室でこってりしぼられたという。(約一名は終始楽しそうだったらしい。)


来神高校でのひとコマ

2010/10/21



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