そこには、不良に絡まれている、例の浅羽祐樹がいた。
「いい加減謝れよお前。人にぶつかっといてさぁ?ああ!?」
「いや、そっちがぶつかってきたんですが・・・」
「はぁ?謝罪と金で済ますっつってんだから安いと思え!」
不良たちからは、何やらそんな物騒な会話が聞こえてきた。
(あー、古典的なわざとぶつかっといて金巻き上げようパターンね。
しかしまあ、あいつ感情ないの?全然焦ってないじゃない)
確かに、浅羽はいつもどおりぼーっとしている。
仮にもクラスメイトが不良に絡まれているのに、それを見て動じない梨萌も同じようなものだが。
どうしたものだか、と梨萌は考える。
不良達がいる道を通らないと学校には行けないし、それに1人で窓を開けたりするのはめんどくさい。
(・・・相手は4人。
なんてかっこいいこと思ったけど、私プロレスとか習ってないし)
と、その場に突っ立っていると、
「あ?なんや姉ちゃん?」
不良の1人に、梨萌の存在がばれた。
(うあー・・・。めんど)
一斉にこちらを向く不良達。
浅羽はというと、梨萌の存在を知っても大して驚きもしない。
相変わらずの、眠そうな顔をしている。
「えー、っと。
そいつのクラスメイト、です」
なんやと言われたので身分を名乗る。
「ならちょうどいいわ。こいつの謝罪金のかわりに、姉ちゃん俺らとどっか行こーぜ」
そう言い不良の1人、金髪の顔が残念な男が梨萌の肩に手を回してくる
ダンッ!
────途中で、不良は地面に勢いよくぶっ倒れた。
「まあ、習ってはないけどそこそこの腕はあるからね」
手をはたきながら梨萌は気絶した男を見て言う。
男の腕をつかみ、梨萌は勢いよく背負投けしたのだ。
「というわけで、私は日直だから急いでんの。
骨折させてあげてもいいけど、どうする?」
にっこりと笑顔で不良に尋ねる。
「に、逃げるぞ!」
不良たちは顔を真っ青にして、浅羽を置いてどこかに逃げていった。
「ったく・・・。
大体さあ、こういうのって女子が絡まれてて男子が助けるのが普通よね」
日常なんてそううまくはいかないかぁ、とため息をつく。
「・・・あー、どうも・・・」
と、半ば存在を忘れていた浅羽が、本心で言っているのかは知らないがお礼を言ってきた。
「あんたもさ、朝からぼーっとしてるから絡まれるのよ?」
「はぁ・・・」
「あ、もう8時じゃない。
早く行・・・・・・」
梨萌の体が、ぐらりと揺れる。
バタンッ
その場で、今度は梨萌は倒れたのだった。
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