ひとり黙々と勉強をしていたけれどついに集中力が切れてしまった。小腹が空いたのでコンビニにでも行こうと立ち上がって背伸びすると財布だけ持って玄関に向かった。
江文は今頃何をしているのだろう。菅平というところへ合宿に行ってしまい夏休みだと言うのにほとんど会えないでいる。でも最近の江文は練習にも参加しているようで1年生の時と比べてとても楽しそうだ。江文が楽しいなら私はそれでいい。でもやっぱり少し寂しい。
そんなことを考えながら玄関のドアを開けて一瞬時が止まったみたいに停止してしまった。ドアの前にいた人物も驚いたのか停止していた。
「江文!」
江文だ江文がいる。嬉しくて駆け寄ると鋭い眼光を向けられた。
「お前…」
「え、なに、いたたた!」
「こんな時間にどこ行くつもりだコラ」
頭を鷲掴みにされて痛い。
「コ、コンビニ…」
「一人で危ないだろうが」
「ごめんなさい」
謝ると頭に乗せられていた手が離れそのまま右手を繋がれた。
「江文?」
「行くぞ」
「うん」
あ、恋人繋ぎだ。手を引かれると嬉しさが込み上げてくる。
「江文」
「あ?」
「おかえり」
まだ言ってなかったと思いおかえりと告げるとピタリと立ち止まった。と思ったら方向転換した。
「どうしたの?」
「やっぱ帰る」
「え、どうして」
また手をぐいぐい引かれ来た道を引き返してしまった。
「久しぶりだからなぁ」
「?」
私の家を通り過ぎ江文は自宅の玄関を開けた。そのまま手を引かれ部屋に連れて行かれた。
「江文っ」
ドアが閉まったと思ったらキスされて離れたと思ったらベッドに座らされまたキスされた。自分の置かれている状況に緊張して身体が勝手に硬くなってしまう。頬を撫でられて肩が大袈裟にびくりと跳ねた。
「緊張しすぎ」
「ご、ごめっ」
慣れてなくて声まで震えると江文の腕が背中に回され苦しいくらいぎゅっと抱きしめられた。
「江文、わっ」
江文は私を抱き締めたままベッドに寝転がった。
「眠い」
「う、うん」
頭を撫でられて緊張が解れてきた。
「さすがに疲れた」
「おつかれさま。合宿どうだった」
「試合に勝った」
「おめでとう初めてじゃない?」
「ああ、やっぱ嬉しいもんだな」
「よかったね」
「俺がいなくて寂しかったか」
「うん。でも平気。江文がラグビーしてるとこ好きだから」
「そうかよ」
あ、今照れた。
「俺も寂しかったぜ」
「本当?」
「寝る直前とかにふと思い出した時な」
「えーそれだけ?まあいいけど」
江文は一度笑うと私を引き寄せ額にキスしてくれた。
「寝るわ」
「うん。おやすみ」
こんな江文初めてでドキドキする。たまには離れてみるのもいいかも。と思ったけどやっぱり寂しいのでずっと一緒にいたい。そう思いながら私も目を閉じた。