ベルベット一行に同行することになりエレノアのおかげでみんなともだいぶ打ち解けることができ、戦闘にも慣れてきて旅が楽しくなってきた。
旅というものは不思議なことばかりで好奇心が留まることを知らない。
次の目的地までしばらく時間がかかるということなので今日はこの大きな海賊船バンエルティア号を散策することした。
さっそく甲板に出るとエレノアの姿を見つけ迷わず駆け出した。
「エレノ…」
名前を呼ぼうとしたけれど途中で口を噤んだ。エレノアが誰かと話をしていたからだ。
あれはロクロウか。エレノアと楽しそうに…羨ましい!
二人とも盛り上がっているのか声が大きくて聞くつもりなんてなかったのに立ち聞きをする形になってしまった。
「なまえってどんなやつなんだ?」
「ふふ。なまえに興味があるのですね」
「応!」
「素直なロクロウには特別に教えてあげます」
エレノアはニコニコと可愛らしい笑みを浮かべどこか楽しそうに見える。
「なまえは優しくて強くて、ああ見えて几帳面なんです。書類仕事なんかも丁寧ですし掃除が上手で部屋はいつも綺麗にしています。あと何と言っても料理が得意なんです!なまえの手料理は絶品ですよ!」
「ほお。手料理か」
「はい。話していたら久しぶりに食べたくなってきました」
エレノア…私のことそんな風に思ってくれていたんだ。今すぐ食材を調達してエレノアの為に手料理をご馳走したい。ダメだここは船の上だ。
エレノアの言葉があまりにも嬉しくて感激に浸っているといつの間に目の前にエレノアとロクロウがいた。
「なまえ?どうしたのですか顔が赤いですよ」
「ごめんなさい二人の話聞いてしまって」
「すみません、本人のいない所で話題にされるなんて嫌ですよね…」
「え、ううん!そんなことない!エレノアの言葉嬉しかった」
嬉しすぎて頬染めてますなんてさすがに言えない。
「それにしてもべた褒めだったな」
「ええ、ですが決してお世辞ではありませんよ。私が男だったらなまえはお嫁さんにしたい女性ナンバーワンですから」
「私もエレノアと結婚したい…」
「ふふ、ありがとうございます」
二人でキャッキャしているとロクロウが不意に呟いた。
「そうかそうか俺は男で本当によかった」
えっ、と振り返った私にロクロウが不敵にニヤリと笑ったのが見えた。