「えーとあれはどこだったかな…痛っ!くない…」
クローゼットを開くと上から何かが転がってきて頭に直撃した。
「もうなに…」
転がってきたのは紙袋だった。重量物ではないようなので幸いにも痛みはなかった。拾い上げて中を確認して首を傾げた。
「なんだっけこれ?」
◆
「ねぇ篤」
「なんだ」
「今日予定ある?」
「ないな特に」
「よかった。じゃあ家に来て」
「…おう」
突然、なまえから家に来てと言われた。何度か行ったことはあるからすっかり慣れてしまっていたはずなのに今のなまえに誘われると何故か緊張してしまう。
「お邪魔します」
「どうぞどうぞ」
なまえの部屋に通されて適当に座るとなまえも正面に座った。
「家に来てもらったのは聞きたいことがあるからなの」
「聞きたいこと?」
「篤、私が記憶なくなる前、誕生日だった?」
「ああ」
「やっぱり…覚えてなくてごめんね」
「気にするな。思い出したのか」
「ううん。これ見て」
「手帳?」
「うん。スクールバッグに入ってたの。昨日いろいろ見てて…あ、ここ」
「見てもいいのか」
「うん」
手元を覗くと6月15日の所に『篤のBirthday』と書いてあった。そしてその下に雑な字で『篤のバーカ!』と書いてある。
「………」
「私たちこの日ケンカでもした?」
「したな」
「やっぱり!バカは私だよね誕生日にケンカって理由は覚えてないけどごめんね篤」
「いや。あれは悪かったのは俺だ」
「そうなの?」
「任務があったその日は」
「それで待ち合わせに遅刻したとか?」
「疲れて寝てた。なまえに連絡しないで」
「あらら。それで怒ってこれ書いたのかな」
なまえは可笑しそうに笑っている。
「今なら任務だから仕方がないって思うのに結構短気だったのかな」
「そんなことない。怒って当然だあれは」
「でも誕生日くらいは1日仲良くしていたいよね」
なまえは手帳を見て少し寂しそうな顔をした。
「なまえ…」
「またひとつ思い出せてよかった。あ!そうそう」
なまえは立ち上がりクローゼットを開けてなにやら紙袋を取り出した。
「これなんだけど」
「スポーツウェア?」
「うん。これ篤へのプレゼントだと思うんだ」
「俺に…」
「うん。うちスポーツする人いないの。それにこれサイズ的にもぴったりだし篤の誕生日だったって聞いて確信したよ。はい」
「いいのか?」
「うん。遅くなったけど誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「ねえ着てみて」
言われた通り着てみるとなまえは目をキラキラさせた。
「似合う似合う!かっこいいよ篤」
「照れるな」
「これからもよろしくね篤」
「ああ」
またひとつ思い出してくれたなまえと新しい思い出がひとつできた。