「さん…東さん」

「んー…」

「朝ですよー」

「あー…」


肩を叩かれ眠い目を開けるとなまえが覗きこんでいた。


「おはようございます」

「おはよう。体調どうだ」

「もうばっちりです!東さんが看病してくれたからですね!」

「それはよかった」

「東さん朝ごはん食べます?」

「ああ、お願いするよ」

「分かりました!すぐに準備しますのでちょっと待っててくださいね」


なまえはルンルンとキッチンへ消えていった。


なんだこれ…幸せすぎるだろ。

昨日までの絶望感が嘘のようだ。



朝ごはんを食べ終え支度が終わると玄関に向かった。


「俺は一旦、家に帰るよ」

「はい!東さん看病していただいてありがとうございました。本部で会いましょうね!」

「………」


「どうしました?」

「なまえキスしよう」

「え!?えっ!や、やだ朝からなんですか!?」


肩を掴むとなまえはいやいやと真っ赤な顔で抵抗したがお構いなしだ。

かわいすぎるなまえが悪い。










「あ!蒼也くんおはよう」

「おはようなまえ。元気になったみたいだな」

「うん。もう風邪はすっかり治ったよ」

「東さんとも上手くいったみたいだな」

「え、分かるの?」

「それだけ浮かれていれば誰でも分かる。頬が緩んでいるぞ」

「き、気をつけます…」

「まあよかったな」

「うん。蒼也くんたくさん迷惑かけてごめんね」

「迷惑だと思ったことはない。気にするな」

「ありがとう蒼也くん」

「あ、いたいた!お話し中すみません。なまえさんちょっといいですか」

「はい。今行きます。蒼也くんまたね!」


研究員に呼ばれなまえは行ってしまった。


「で、太刀川いつまでそうしているつもりだ」

「あ、やっぱりバレてました?さすが風間さん」

「盗み聞きとは感心しないな」

「ハハ…すみません…」

「で、なまえに何の用だ」

「いやー…まあ、この間のことさすがにやり過ぎたと思って謝りたくて…」

「今更か?」

「俺のせいで東さんとややこしいことになったみたいだからさ…」


ゴニョゴニョと煮え切らない太刀川に風間は背中を叩いた。


「痛いっ!」

「行くならさっさと行けなまえのことだどうせ何とも思ってないからな」


太刀川は背中を擦りながら口を尖らせた。


「それなんですよね〜俺のこと眼中に無さすぎてヘコむって言うか…だからついちょっかい出しちゃうと言うか…」

「お前でかい図体して女々しいな…」

「ですよねー…」


太刀川はガクッと肩を落とした。


「謝るとかって俺がすっきりしたいだけだよな…なまえさんの優しさに付け込んでるだけだ」


結構本気で落ち込んでいる太刀川をチラリと見ると風間はため息をついた。


「謝ろうが無かったことにしようがなまえはお前を嫌ったりしない。前と変わらず仲間だと思っているはずだ」

「俺やっぱちゃんと謝ってきます」


太刀川はなまえの元へ駆けて行った。そんな太刀川の背を見送りながら風間は息をついた。


「あいつもなかなか世話が焼けるな。まあなまえは許すとしても東さんには脳天に一発くらい食らっといた方がいいな」


腕を組んでうんうんと頷き風間は作戦室に戻って行った。





「なまえさんごめん!本当にごめんなさい!」

「そんな何度も謝らなくていいよ。気にしてないから」

「いやーむしろ気にして欲しいって言うか…もっと怒って欲しいって言うか…」

「太刀川くんそういうのが好きなの…?」

「いやいや、違う違う。今の忘れて」

「うん…?」


なまえをじっと見つめていた太刀川の表情が曇っていく。


「俺もうなまえさんに近づかないようにするからさ…」

「どうして?」

「だって嫌だろ自分に好意寄せてるやつが近くにいるの」

「え」

「言っとくけど俺まだなまえさんのこと好きだから」

「太刀川くん…」


太刀川の好意に応えられないなまえは眉を下げた。


「じゃ俺行くわ。今まで本当にごめん」

「私、太刀川くんと話すの楽しくて好きだったよ」


なまえに背中を向けトボトボと歩いていた太刀川は突然くるりと振り返りダッシュで戻ってきた。その素早さに驚いてなまえは1歩下がった。


「まじ!?」

「う、うん。大学の話とか新鮮で好きだったよ」

「じゃあ、また話しかけていい?」

「うん。もちろんだよ」

「よっし!じゃあ俺、なまえさんのために大学行くよ!」

「え、うん」


よく分からないけどやる気を出してくれたみたいなのでとりあえず頷いておいたなまえだった。


「今から講義出てくる!じゃあまたななまえさん!」


なまえはぽかんとしながらやる気満々で走っていった太刀川の背が見えなくなるまで見送った。




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