「なあ、出水ー」
「んーなんすか」
「なんでなまえさんってああなんだと思う」
「すみません。話が読めません」
任務までの待機時間作戦室で暇を持て余していた俺は出水に質問したが出水は頭に?を浮かべている。とりあえず今までのことを掻い摘んで説明すると最低っすねと言って頬を引きつらせた。
「ほんとにあの時の太刀川さんは最低でしたよ!わざわざなまえさんに画像見せる必要なんてなかったですよね!」
一緒にいた国近がぷんぷん怒り出した。
「そう!それだよ」
ビシッと国近を指差すと反省してるんですか…?と恐い目で睨まれた。
「普通そんな風に怒るだろ?でもなまえさんは全然怒らないし話しかけても今まで通りの態度で接してくれる。なあ不思議だろ?」
出水は俺の話に呆れた顔をしながらため息をついた。
「なまえさんが太刀川さんのことなんとも思ってないからですよ。だからセクハラされようが嫌がらせされようがなんてことないんすよ。なまえさんの頭の中は東さんでいっぱいですし」
「お前はっきり言うなー」
出水はふいと顔を背けた。
「俺は散々嫌がらせされたなまえさんの味方です。好きなのは分かりますけどそんなことばっかりしてたらいつか罰が当たりますよ」
「もう当たった」
◆
「東さんに好きなんて言われたことないよ」
そう言ったなまえさんは今にも消えてしまいそうに儚く笑った。俺は拳を握るとなまえさんを引き寄せた。突然腕を引かれ驚いて転びそうになったなまえさんを抱きしめた。
「なまえさん。俺、なまえさんが好きだよ」
「え」
「俺は絶対になまえさんにそんな顔させたりしない」
「太刀川くん…」
「だからっ…俺のこと好きになれよ…」
答えなんて分かってる。だから最後は泣きそうな声になった。
「太刀川くんありがとう。でもごめんなさい」
なまえさんは俺の身体を両手でそっと押して離れた。
「私は東さんだから嬉しくなったり悲しくなったりするんだよ…」
知ってるそんなことでも…。
「なんでだよ…」
分かっていても聞いてしまう。
「好きだからだよ」
なまえさんは今まで見たこともないほど綺麗に笑った。
◆
「俺ちゃんとフラれて来たし」
感傷的なため息をつくと出水と国近は俺の肩に手を置いた。
「太刀川さん。辛いことは飲んで忘れましょう。付き合いますよ」
「そうですよ。私達飲めませんけど」
「なまえさんがいなきゃやだ」
「全然諦めてねーなこの人!」
出水が叫ぶと作戦室に笑いが起こった。ありがとうちょっと元気出た。
「そういえば国近」
「はい?」
「なまえさんの誕生日会兼飲み会の時って東さんに声かけたのか?」
「もちろんですよー。でも東さん予定があるからって言ってました」
国近の答えに首を傾げた。
「予定って画像の女と会うことか…?」
「普通になまえさんの誕生日祝おうとしてたんじゃないすか?」
「私もそう思ってなまえさんには時間を置いてからお誘いの連絡したんですけど普通に了承貰えたからちょっとあれ?って思いました」
「てことは東さんはなまえさんを誘う前に画像の女に捕まった。そこを俺が激写してしまったと…」
俺がぽんと手を打つと出水と国近が手をポキポキ鳴らしながら近づいてきた。
「だいたいあんたのせいだな」
「なまえさんはもっとキレていいよ本当に」
「ちょ、お前ら落ち着けっグハッ!」
出水と国近にボコられながらすれ違う必要なんてなかったかもしれないなまえさんと東さんに改めて申し訳ないと思った。