「お誕生日おめでとうございます!!」

「わぁ…!ありがとうございます!」


みょうじの20歳の誕生日。仲の良いメンバーで集まって飲みに行くことになった。ケーキまで用意されておりきらきらした瞳でみょうじはそれを見つめていた。


「なまえも20歳か。いつ見ても年上に見えねーな」

「諏訪くんそれは褒めてるの?」

「褒めてる!褒めてる!」


諏訪はコーラしか飲んでいないのにテンションが高い。


「なまえさん俺もっと強くなりたい。今度、武器の改良手伝って」

「太刀川くんは頑張り屋さんだね。うん、いつでも研究室に来てね」


太刀川はできれば二人きりで!とガンガンアピールしている。


風間は黙々と食事をしているがみょうじの横を陣取っている。


噂には聞いていたけど…。


「なまえって人気あるのよね」


みょうじの周りを観察していると沢村が隣に座った。


「素直で面倒見がいいから特に年下にモテるのよ。誰にでも優しくしすぎなのよね。いいことだけど警戒心がなさすぎるわ」


沢村にジロリと睨まれた。


「誰のせいかしら」

「俺ですね。はい」


家出してきたみょうじを自分の家にかくまった。俺はもちろんみょうじに危害を加えるようなことはしなかった。それがみょうじの警戒心を鈍くさせてしまったらしい。普通、男の家にいたらなにが起きてもおかしくない。


「でもなまえを見つけてくれたのが東くんで本当によかった」

「本当によかったのかな…」


出会い方が特殊すぎたせいで俺達はあの頃と同じような関係をずるずると続けている。このままでいいはずがない。佐鳥にも怒られたしな。

この関係を全進させるにも終わらせるにも俺が行動に移さなくてはいけない。



誕生日会兼飲み会も佳境になり未成年の方が多いのにみんな妙なテンションになっている。


「なまえ、大丈夫?」

「ら、らいじょうぶれす…」

「全然大丈夫じゃないわよ。一人で帰れるの?」


沢村に肩を叩かれているみょうじはうつらうつらしている。


「俺が送るよ」


飲み代を置いてみょうじを背負った。諏訪がおおっ!とやたら楽しそうに叫んだ。何度も言うが諏訪はコーラしか飲んでいない。風間と太刀川の視線が痛いが気づかないふりをしみんなに先に帰る詫びをして店を出た。しばらく歩くとみょうじが背中で動いた。


「ん〜東さん…?」

「大丈夫か?」

「大丈夫ですよぉ」

「何杯飲んだんだ?」

「一杯ですぅ」


一杯でこれだと…。


「俺がいないときに酒飲むの禁止な」

「えーどうしてですか?」

「どうしてもだ」

「うー。はい」


俺がいないときに酔っぱらってもしものことがあったらと思うと気が気じゃない。


「東さんのおんぶ二回目です…えへへ」

「そうだな…なあみょうじ…」

「あっ!東さん!くつ、靴脱げちゃいました!」

「え、あ、本当だ」


足元を見るとパンプスが転がっていた。近くのベンチに座らせその前に膝をつくと靴を履かせた。


「何から何まですみません…」

「気にしなくていいよ」

「いいえ、東さんにはお世話になってばかりで…」


みょうじはそう言いながらうつらうつらしている。


「なまえ…」


虚ろだった顔が弾かれたように上がった。


「いい名前だな」

「はい!両親が付けてくれたんです」


懐かしむように微笑んだ後ふと切ない表情になった。ご両親が生きていたなら今とは全然違った人生があったのだろうか。そんなことを考えてしまった。


「東さんにもなまえって呼んでほしいです」


頷くとなまえは花のように笑った。けれどすぐ眠そうに目を擦った。


「大丈夫か?うちに泊まっていくか?」

「ダメです!ダメです!ちゃんと帰らないと…」


頭を振ってなんとか目を覚まそうとしているなまえの手を強く握った。


「帰したくないって言ったら困る?」


目を見開いて俺を見たなまえの顔がみるみる赤くなっていく。どうやら意味が通じてくれたようだ。


「こっ…困り、ません…」


真っ赤な顔でそう返すなまえの座っているベンチの背に手をついて両腕で囲うように近づくと目をぎゅっと閉じた。

初々しい反応が反則すぎる。触れるだけのキスをするとすぐに離れた。目をそっと開いたなまえは赤い頬を両手で押さえた。


「好きです東さん…大好きです」

「俺もだよ」


なまえは首に抱きついてきた。その背を強く抱きしめ返した。しばらくそうしていたがやがてどちらからともなく離れた。


「さて、そろそろ帰るか。またおんぶするか?」


からかうように聞くとなまえはバッと立ち上がった。


「も、もう自分で歩けます!すっかり目が覚めました」


俺も立ち上がり手を差し出すとなまえは嬉しそうにその手を握った。


「まだ顔が熱いです…恥ずかしい」

「これからもっと恥ずかしいことが起こるかもしれないぞ」


からかうとさらに赤くなりながら硬直した。冗談だよと笑うとバシバシ叩いてきた。

それを笑いながら二人で家に帰った。



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