ボーダーの資料室でなまえは本を棚に戻す作業をしていた。
その後ろ姿を当真、荒船、村上の3人が出入口からまじまじと眺めている。
「みょうじいい身体してんな」
「おい当真…」
「確かに。腰から尻にかけてのラインがなかなかエロい」
「荒船まで…」
村上が呆れたように二人の会話を止めさせようとした。
「な?鋼もそう思うだろ」
「えっいや、まあそうだな…」
村上はなまえをチラッと見て顔をわずかに赤くした。
「健全な男子高校生だな、鋼も」
突然した背後からの声に村上はビクッと肩を跳ねさせて振り返った。
「いたのか穂刈。いるなら止めてくれ」
「何をだ」
「何をじゃなくて彼女が変な目で見られてるんだぞいいのか」
「脚もいいぞなまえは」
「そうじゃなくて…」
穂刈は顎に手をあてなまえを見た。
なまえは穂刈達に全然気づいていないようで一生懸命資料整理を続けている。本を棚に戻そうと背伸びをしているが届かずにフラフラしている。
穂刈は3人の間をすり抜けてなまえの元へ向かった。
「あと少し…あと少し…」
腕をこれでもかと伸ばしているがもう少しの所で届かない。悪戦苦闘しているとなまえの手に大きな手が被さって本を棚に収めてくれた。
なまえはぱっと明るい表情になり顔だけで振り返った。
「篤、ありがとう!」
そして深く息をつくとそのまま背後の穂刈にもたれかかった。
「ふー…やっと終わった!最後の一冊がどうしても届かなくて助かったよありがとう」
「おつかれ。ところで見ていた」
「え?なにが」
穂刈は視線を出入口にいる3人に向けるとなまえもそちらを見た。
「もう!いるなら手伝ってよ!」
ぷんぷん怒っているなまえの背後から腕を回すとびっくりしたのか石のように固まった。
「おーイチャイチャしだした解散!解散!」
当真たちは笑いながら資料室をあとにした。
「なんだったのあの3人」
「……」
「篤?」
「………」
「なんなの無視?」
「………」
「ねえそろそろ離して」
穂刈の腕を外そうとしたがさらに力がこもってしまった。
「篤なにかあった?今日変だよ」
「あいつらなまえのこと、いやらしい目で見てた」
なまえの頭に顎をのせてぽつりと呟いた穂刈に視線を向けた。普段からあまり表情に出ないため分かりにくいがどうやら拗ねているようだ。
「なに嫉妬?」
「ああ」
「ふーん。どうせ一緒に盛り上がってたんでしょ」
「ああ」
「やっぱり」
なまえは逃れるのを諦めて穂刈の腕を撫でた。
「篤、逞しくなったよねー昔はここまでじゃなかったよね」
「趣味だからな筋トレ」
「篤の腕好きだなー程よく筋肉ついてて」
なまえは振り向くと穂刈の身体に手を這わせた。
「胸板も好きだなー」
「セクハラだー」
「フッフッフ…お兄さんいい身体してるね」
「変態だ助けてくれ、鋼」
「ん?鋼くん?」
なまえが出入り口を見ると村上が赤い顔でわなわなしていた。
「おっお前らここ本部だぞ」
「どうしたの鋼くん?帰ったと思ってた」
「いや、その…みょうじに謝ろうと思って戻ってきた」
「まじめだねー」「まじめか」
二人に同時に突っ込まれた村上はぺこりと頭を下げた。
「悪かったみょうじ」
「そんな謝らないで。大丈夫だよ」
「そうそう。気にするな」
「穂刈は気にしろよ。彼女だろ」
「篤がいちばん変態だからね。仕方ないね」
そう言いながらお尻をさわさわ触っている穂刈の手をピシャリと叩いた。
「お前ら本部では自重しろよ」
赤い顔で視線を逸らす村上を見てなまえと穂刈はニヤニヤ笑って村上を囲った。
「顔赤いね。かわいいね鋼くん」
「穂刈、裏声やめろ気持ち悪い!」
「鋼くんも健全な男子高校生なんだねー」
「や、やめろ触るな!」
いつのまにか二人にからかわれセクハラされる村上であった。