怖くなんか


鉄格子の間を冷たい風が吹く。

遠くには人間ではない生き物が下品にギャッハギャッハ笑っている。

周りにいる人間の女の子は皆目が死んでいた。

光など灯らない。


「さーて次の商品は.....こちらの少女です!!」


同時にギャーーーと喚き回る生き物。


『.......くだらない。』


私は小さく呟く。


綺麗な黒髪に真っ赤に染まる目。
顔が整っているかどうかなど知ったこっちゃないが、自分のこの容姿にはあの生き物どもも食いつくだろう。


『こうやって女の子を売りさばいて....気持ち悪い。ここにいる奴ら全員死ねばいいのに。』

小声でつぶやく。
今すぐにでも自分の手で殺してやりたいが、手首を後ろで縛られ足も縛られているので身動きが取れない。
普段から持ち歩いている護身術用の短剣も取られてしまい打つ手なしということだ。

「わしゃ1億。」

「1億5000万!」

「2億5000万。」

わいわいと盛り上がっていく。
そんなに金を出してまで人間の女が欲しいのか。

そんな中1人の人間の男がキセルを手にこちらへ歩いてきた。
確かこの人は、指名手配の紙で見た事がある。


『...........高杉晋助。』


派手な着物に片目の包帯が印象的だった。
目の前に立とちニヤリと笑う。

「お前怖くないのか。」

何をそんな当たり前のことを。

『...........。』

「だんまりか。」


人が売られようとしている時に一体なぜ話しかけられるのか。


「なんだ、よく喋るじゃねーか。」

『あら声に出ちゃってた?』


相手に合わせて私もフッと笑う。


「くっくっくっく。お前面白いな。」


キセルを一息吹くとより一層色気が増した。
フェロモン尋常じゃないなこの人。


『大事な商品とこんなに喋ってあなたは大丈夫なの?』

「ああ、これの開催に俺は大きく関わったからなぁ。」

『そんなお偉いさんとは..............................
だったら、もうこんなことはやめて。』

「ああ?」

『やめろって言ってんだよ。』


こっちは大事な商品で、檻の中にいる。
どんなに厳しく言っても


「手出しはできないだろう、ってか?」

『っ!!』

「そんな事ないぜ。今ここでお前を檻ごとぶった斬って逃げる事だってできる。」

『...........卑怯者。』

「この姫は口が達者なもんだなぁ。」


またしても、くっくっくっと笑い始める。
変な笑い方だ。
もっと


『楽しそうに笑ったらいいのに。ばか杉。』

「..........。」

『あ、ごめん間違えたひく杉さん。』


途端に刀を少し抜き、ムッとして目をギラつかせる。


『ちょっ、』

「黙れ。.......................
お前は、どこかあいつに似てやがる。」


『あ、いつ?』


一体誰に似ているというのだろう....?

「50億!!」

誰かが叫ぶ声が耳に入った。

そういえば忘れていた。自分が売られているという事に。
さっきの声に周りの奴らが騒ぎ出す。

ああ、これで決まったなぁ。
相手は、あの豚野郎か。気色わりー。
これから私はあいつに買われて、飼われて。
どんな事をされるのだろうか。

下働き、奴隷。
それならまだいい。
もし変なことを要求されたら。
あの豚野郎に身を預けなきゃいけなくなるなんて。

こんなとき無性に家へ帰りたくなる。
お母さんに、お父さんに会いたくなる。
あの心安らぐ場所に。


『このままなんて絶対嫌................
誰か助けてよ。』



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