家事のできる女はモテる


今は朝7時。

名前の勤務時間は朝5時半から夜の9時まで。
長い勤務の間に何度も休憩を挟み長い時間働かせてもらっている。

朝練から戻ってきた隊士がお腹を空かせてぞろぞろやってくる。

もうここで働き始めて一週間がたった。
もう慣れたもので、大体の仕事内容も覚えてきている。


『はいどうぞ〜!あ、ご飯多めですか?分かりました〜佐藤さん、ご飯多めで!』


朝っぱら元気な声が食堂に響き渡る。

言わずもがな名前だ。


「名前ちゃんってなんか、若々しいよね。」
「なんつーか、潤い?泉?的な。」
「あーそれ分かるわー。」


そんな名前の姿を見て、癒しを感じる隊士も少なくない。

なぜならココにはお婆ちゃん、おばちゃんばっかりだったからだ。
そんな事本人達の目の前で行ったら次の日からまともな飯は食えなくなるが。


「俺ワンチャン狙ってみようかな。」
「いや、やめとけ無理だろ。」
「なんでだよ?」


そう一人の隊士が聞いた時、名前の名前が誰かに呼ばれた。


「名前ー、お腹すきやした〜。飯多めで頼んまぁ。」

『お、総悟朝練お疲れ様!りょうかーい!

って、その顔じゃあまともにやってないでしょ?』

「そんな事ないです。」

『標準語になってるし!』


名前の顔に大きな笑顔が咲いたと思いきや、その相手は一番隊隊長沖田総悟。

その総悟さえ少し穏やかに見える。


「一緒に飯食わねーかぃ?」

『んーごめんね。私たち女中の朝ごはんは全部隊士さんたちの片付けが終わってからなんだよ。』

「じゃあそれまで俺もここにいやす。」

『それって単に仕事サボれるからでしょ?』

「あり、バレやした?」

『バレバレ。』


仲よさそうに話す2人。


「絶対沖田隊長のお気に入りだよ。」
「勝手に手を出したらしばかれる。」

「そう言えば副長も何かと近くにいる気が。」
「え、それ俺も見た事ある。でもなんつーか沖田隊長と違って遠くから見守ってる的な....。」

「それって,............好きとか?」
「そりゃねーだろ?あの目で見つめられてみろ、殺されるわ俺。」




「だーれが、殺されるだアァ!!!?」

「「「ひっ!」」」


一気に振り向くと影でこそこそと話していた隊士たちの後ろに、いつの間にか真選組鬼の副長、土方十四郎がとてつもなく怖い顔で立っていた。

もちろん隊士は怯え、すみませーん!と言って走り去っていく。


「土方さんそれじゃあ恐怖政治でさァ。副長に合ってねぇからさっさと死ね。」


それに表情のない顔で食事のプレートを持ったままちょっかいを出す総悟。


「うっせーなお前が死ね総悟!」


土方が総悟にパンチを食らわそうとするが、プレートを持ちながらも余裕でかわす。


『なんでこういう事が器用なの総悟は....。』


私は呆れ半分で小さなため息を吐く。

そこに。


「あ、名前さん、でしたっけ?ご飯お願いします。」


まだご飯をもらってない隊士がいたんだ、と思い笑顔を向けると。


『じ、じみー....!!』

「いや違うよね普通。なんでそれ知ってんの?なんで俺が地味だってわかったの?初対面でもわかるくらい地味なの?」

『あははごめんごめん!つい.....。』


目の前にはちょっとやさぐれたジミーこと山崎退がいた。

黒の忍者にような服を着てるところを見て、観察でもしていたのだろう。


「ついってなに!?もう朝から監察の仕事だしジミーって言われるし最悪だよぉ。」


背中を丸め落ち込む彼はアニメで見るまんま山崎だった。

いくらか地味さが増したくらいだ。


『わぁ、すっごいめっちゃじみー。』

「もういい加減怒るよちょっと!?」


ツッコミが連続で入れられる中、自分の後ろから猛烈なオーラを感じた。

身の危険を感じサッと横にずれる。
きっと土方だろう、と直感的に感じた。


「おぉい山崎、喋ってねーで報告書は出したか?」

「ひえ!?ふ、副長、もちろん!今出します!」


もちろんとは言いつつも肩が上がり顔も引きつっている山崎。ビクビクしながら土方に報告書らしき紙を渡す。

でもそういえば、山崎の報告書って確か......


「おい山崎.........。」

「はいっ!」

「......相手はたぶん20人くらいで、どれもそこら辺から集めた適当な人ばかり。近々テロを起こすとのことなので、早めに倒しちゃった方が良いと思いました。あ、でも、1人強そうな人いました。 山崎。」

「は....はい...?。」

「.........テメー、ふざけてやがんのかァァァ!!こんなんで報告書って言えんのか!!!もっとマシなもんかけ。やり直しだ。」

「ええ!???そんな!」

「今日の夜までにもう一回出しに来い。」

「ふくちょぉぉぉ。」


土方は報告書をパラッと机の上に置きそのまま食堂の一番端に座ってご飯を食べ始める。


『なんか、その、頑張ってください。』

「はぁい。」


さっきよりも背中を丸め食堂を出て行く山崎。
少しだけ可哀想に思えた。


『ホントに恐怖政治....。』

「でしょ?名前もくれぐれ気をつけなさせェ。」

『いや、多分もう目つけられてる。』

「あー.....だろうねィ。ぶぶっ!」

『ちょっと、なんで吹いたの!!ひどい!』

「だって最初に、土方さんに、抱きついて...!」

『うるさいもう忘れるの!!』

「はいはーい。」


軽く受け流されると、総悟は女中のおばちゃんの方へ向かっていった。

何か喋っているようだ。

なんだろう?と思っておると総悟は、もう一食分プレートを持ってきて顎で土方が座っている方を指した。


『ん?』

「一緒に食いやしょう。おばちゃんから許可はもらいやしたから大丈夫でさァ。」

『えーなんか申し訳ないもん。大丈夫ですよ。』

「いいから来なせェ。」

『うーーん...ってちょ、待っ!』


私が渋っているとプレートを持ったまま首に腕を引っ掛けられ無理やり向かわせられる。

今にもひっくり返りそうなプレートに仕方なく共に食事をする事にした。


「なんだおめーもココで食うのか?」

『.........はい。』


席に着くとそうそう土方スペシャルを食らう土方に見られる。

否、睨まれる。


それに私は目をそらせ口を結ぶ。


「ったく、やめてくだせぇ。食べずらいやぃ。」

「オメーが連れてきたんだろ総悟。オメーのせいだ。」

「なに言ってんですかィ。俺はアンタの犬の餌の事を言ってんでさぁ。」

『そっち!?』
「そっち!?」

なんと土方と名前の声がきれいにハモった。

それにお互いに顔をあわせると気まずそうに顔をそらす。


「はあ、あんたらは一体なにしたいんですかィ?」


肩をすくめワザとらしく分からない、という仕草を取る総悟に一言で別に、と答える。

このままいては、いつまで経ってもご飯が食べられないので、小さくため息をつくとすぐに私はご飯を口に運んだ。

ずっと土方さんとこんな関係じゃ嫌だよ.....。

そんな言葉も口に含んだまま。

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