ゴリラゴリラゴリラ


「よーし着いたぞー。」


気だるそうな声でさっとスクーターから降りると、私に手を差し出してくれた。

こういうさりげない優しさが出来るんだよね銀さんは。モテるんだろうな。

そんな事を密かに考えているうちに頭につけていたヘルメットも取ってくれた。


「さぁ、じゃあ行きますか。」

『う、うん。』


目の前にある真選組の門は自分が思っていた以上に大きくて立派だった。

だけれども形はアニメで見た真選組まんま。
本当に真選組に来たんだな、と実感が湧く。
いや、来られるようになってしまった、か。


胸がドキドキという。あの近藤さんに、土方さんに、沖田さんに....会えるんだ。

口に含まれていた唾を飲み込むと、恐る恐る一歩踏み出す。とその瞬間。


「ああ〜今日もお妙さんの愛情表現は過激だな!く〜それも全部受け止められる男にならねば!」

「いや、ちげぇと思うがな近藤さん。」

「そんなことありやせんぜ。きっとあれは照れてるだけなんでさぁ。」

「そうだよな総悟!」

「毎回毎回迎えに行く俺のことも考えてくれよ。」

「うるせぇですぜ。


......................過労死で死ねよ土方。」


「んだとコラァ!!!そんなんで死ぬかァ!」


うるさいほどの叫びに似た話し声。

その声を聞いた時動くことが出来なかった。声のする方を見ることが出来なかった。
まるでコントのような会話。

徐々に、徐々に振り向く。

ああ、


「会えた。」


顔が緩んでいくのを感じる。


「お、丁度良い所にゴリラどものご帰宅ですか。」

「ああん?.....てめー万事屋、何でこんな所に。」

『あ、うあ.....。』

「何でって、コイツがオメェらのとこで働きたいってよ。」

「は?コイツって、どいつだ....、」


『きゃああああああああ、土方さんんん!!』


「ああ?」

「え?」


銀さんと土方さんとの会話の間に黄色い悲鳴が交わる。

と同時に猛ダッシュで土方の方へ走り出す名前。

突然の事に誰一人ついていけている人はいない。


『きゃあああホントに土方さんだ!!カッコいいカッコいいカッコいいぃぃぃ!』


名前に走り寄られてる土方でさえ口を開けポカーンとしている始末だ。

名前はというと、そんな周りの人のことなど1ミリも気にせず土方にペタペタと触れまくっている。

あまりのスキンシップに土方は気を取り戻したのか、瞳孔をめっちゃ開かせ距離をとる。


「んだテメー!なめてやがんのか!」

『やだ喋ってるゥゥゥ!!怒られたァァ!』


「え.....名前ちゃーん?」


銀さんが引きつった顔を隠せぬまま名前を呼ぶ。

土方も近藤も沖田も変なものを見る目で名前を見る。

それに気づいた名前。


『あっ、ご、ごめんなさい.......。』

「ったく、てめーホント何なんだ!」


土方がとてつもなく変な目で見てくる。

思わず口を結ぶ。

実は私、銀魂の中でも土方さんが一番大好きだったのだ。


『いやっその、ホントにごめんなさい........。』


頭を下げながら言う。
だがその声に誰も反応をしてくれる人はいなかった。

いや一人場違いで大笑いしてるやつがいた。


「ぶっ、ぎゃははははは!!ホントなんなんですかいあんた!頭でも狂ってるんじゃねーんですかィ?」


この子は...人が困っているという時に!

おなかを抱えながら土方さんを馬鹿にするような顔で笑いこける沖田総悟。
そこは本当に総悟なんだなぁ...とまたしても感じた。

総悟にあきれている間に目があったのは近藤さんだった。

一瞬近藤さんがビクッとするが、


「まぁまぁいいよ!な、トシ!

俺も1人の人を追いたくなる気持ちは分かる!な、トシ!」

「二回も言わなくても通じるよ近藤さん。」

「がははははそれもそうだなトシ!」


さすが近藤さんだなぁ.......。


『ありがとう、ございます。』


ニコッと笑いかける。

すると沖田が笑いながらも本題に入ろうとする。


「それで、話が思いっきり脱線しやしたが旦那、この変人女は何なんですかィ?」

『あ、忘れてた....。』


ってか変人女って.....


「そーいやーそーだったな。実はコイツがよぉ真選組で働きたいって、」

「却下だ。」


銀時の言葉に被せ気味で真っ直ぐ土方が否定する。


『なっ。』

「あたりめーだ!こんな気持ち悪い女屯所に置いてけるかよ!!」


気持ち悪い女.............。

でもこのままじゃ絶対に真選組に置かせてなんてもらえないだろう。
それでは私の描いていた生活が崩れてしまう。
どうしよう。

もうこなったら情の深い近藤さんにかけるほかない。


『どうかお願いします!どうしてもココで働きたいんです。』


あんな事をしておいてすぐにお願いを聞いてくれるだなんて思っちゃいないけど、それでも、どうにかと頭を下げる。


「なぁトシ、この子はどうしても嫌な子とはおもえないんだよなぁ。」


案の定近藤さんが食いついていた。


「ったく近藤さんのお人よしが...。言いたいことは分かってるよ。」

『ならっ!』

「だが生憎女中は足りてるんだ。」


『え....。』


「嘘つきなせぇ、最近古株の女中頭が辞めちまって困ってたとこじゃねーかぃ。」

「.......ちっ。」


それってホントなの?

つまりは土方さんが嘘をつくくらい嫌だってことなのかな。

それなのにココにいたって迷惑になっちゃうだけなんじゃ.....。


『あの、ごめんなさいっ、その、やっぱ、いいです。』


泣きそうだ。

銀魂のみんななら受け入れてくれる、だなんて甘いこと考えてたな......。

そうだよ。みんなだって生きてるんだから。


バカだなぁ私。


無理矢理にも涙をこらえて笑う。


「あーあ土方さん.....。」

「ちょっとトシ.......。」

「なっ、オメェら.....。ったく仕方ねぇ。」


眉の間に皺をたくさん作りながら頭をくしゃっとする。

そんな姿にもカッコいいと思ってしまう。

「おいっ。」

『は、はい!?』

「家事掃除もできねぇやつを置く訳にわいかねぇ。」


それって......................。


『家事掃除なら得意です!!』

「なら、こい。」


土方さんはそれだけ言うと真選組の中へと歩いて行った。

確認が欲しくて周りを見る。

近藤さんはニコッと笑う。

総悟は無表情だがどこか楽しそうだ。


『っ!銀さん!ありがとう!!行ってきます!』


そして銀さんに手を振る。
「おうじゃあ後でな。」と銀さんも手を振り返してくれて、私は土方さんを追った。

[1/1]


|

[back]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -