ビリビリに引き裂かれたキャンパス。私の作品だったものの前で膝を抱えて顔を埋める私。
「君はもっと自由に生きるべきなんだよね」
いつのまにやらアトリエに来ていたらしいアーティさんが言う。自由に、なんて、そんな難しいこと言わないで。
「……私はアーティさんじゃないですから」
みんながみんな、あなたのように自由が許されるほどの才能の持ち主じゃないんです。ポツリと呟いてみた。アーティさんの顔が見えないから、彼がどんな表情をしているかなんてわからなかったけれど。
「好きとか、憧れとか夢とか、そんなんで生きていけるほど世の中甘くないですよ。アーティさんにはわからないでしょうけど」
才能のないものが好きなことを好きなだけやっていられる時期なんて限られている。汗と涙は裏切らないなんて、嘘だ。
翼がないものがどう足掻いたって飛べっこない。
「わからないね」
アーティさんはためらないなく私を惨めにする。
「僕に才能はないよ」
元気のない声でそう言ったアーティさんを振り向くと、苦笑いしていた。
「だだね、誰よりも創ることが好きなだけさ」
そんな言葉、響かない。響かない。
きっと数年後にはあなたの傍にいられなくなる。忙しなく街を歩き回る働き蟻のような人の群れに混ざって、同じく私も働き蟻のように、ありふれた仕事を義務的にこなすようになる。ああ、足並みを揃えて歩くことの苦痛さ。私はただあなたの隣を歩きたいだけなのに。
誰よりもあなたが好きならあなたの傍に居られるの?



筆者:めのくま
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