私が一番じゃないなら優しさも甘い言葉も意味がない。二番目になった瞬間からどんな魅力的な言葉も色褪せていく気がする。だからあなたにいくら砂を吐くほど甘い台詞をかけられても、痺れるような愛撫をもらっても、なにも嬉しくない。
「おや、ならばどうすればお気に召しますか?」
白蘭様のこと嫌いになって、忘れて。
でも私も白蘭様のことは好きだったし、白蘭様に遣えていない桔梗は桔梗じゃない気がした。でも、同じ白蘭様が好きでも、桔梗は他の真六弔花とは違うのだ。抱えるものも捧げるものも同じなのに。それは、彼のアイデンティティーが白蘭様に忠誠を誓った姿そのものであるからかもしれない。
「わかんない」
「困りましたね。私もどうすればアンを満たして差し上げられるのかわかりません」
そう言って私の髪を一房掬い上げると、そっと口づける。髪を伝って震える感触に、くすぐったくて身を捩った。
「もっともっと愛して。脳がふやけるくらい。砂糖付けのフルーツみたいに私の色をもっと鮮やかに、私を甘く翻弄してみせて」
「それでよろしいのですか?」
「うん」
彼は品よく私の頬に手を添えると、唇に口づける。白蘭様はこの熱を知らない。それだけでいいかもしれないと思えるほどには愛されなきゃ私の愛の割に合わない。
薄く口を開き、彼の唇に噛みついた。開いた傷口から彼の熱量を吸う。そうすると彼はそっと離れていった。赤の滲む唇を手の甲で拭いながら、薄く笑っていた。
「いけない子ですね」
「それが私の愛なの」
愛欲の滲む唇に触れる。
「愛って痛いのよ。お菓子みたいに甘くない」
そう言ってから、はたと思った。ああ、だからか。桔梗は甘すぎるから、愛されていると感じないのだと。
「シュークリームのクリームみたいに。桔梗の中の甘い愛欲を痛みで感じさせてほしいな」
私がにんまり笑うと、桔梗も、やれやれといった風に目を閉じて薄く笑った。
「そういった趣向がお好みでしたか」
趣向もなにもそれが本当の愛だと思うんだけどな。
「ならば、お望みのままに」
きっと桔梗はなにもわかってない。でも、興じすぎて垣間見えることはあるかもしれない。
互いに瞳を覗く。再び口付ければ、きっと砂糖の甘さよりもシナモンのようなスパイスが広がるだろう。


筆者:めのくま
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