3 ずっと気になってたヤツがいる。 そいつはウソがうまくて詐欺師みたいなヤツで、でもどこか人を惹き付ける。 貼りつけた仮面の、その裏側を見てみたかった。 それが恋情になったのはいつだったか。 「ユーウっ!!どうさうまくいってる?」 「お前か……余計なことしやがって…」 相変わらずウザイほど明るい笑顔にため息をつく。 ラビとは家が近所で昔からのつきあいだ。学校ではクラスが違うためあまりつるむことはないが。 聡いラビは俺の変化にいち早く気づいた。それからというもの、何かとその事について触れようとしてきた。今回のことも大方ラビが何かふっかけたのだろう。 アイツが何かとかまってくるようになって、正直嬉しかった。だけどアイツの目を見てその喜びが幻だったと気づいた。 あんな風にそばにいてほしいわけじゃない。あんななにも見てないような目で、俺を見ているふりをしてほしくない。 近くて遠い、アイツの心。 『お前は本気で誰かを好きになることがあるのか?』 あの日からずっと僕の耳についてまわる言葉。 本気って何?恋愛なんてただの遊びなんだ。本気にする方が馬鹿なんだ。 そう思ってたはずなのに。 本気で人を愛せる彼がうらやましい。真っ直ぐな気持ちを向けられる彼の想い人が妬ましい。 僕が自分で積み上げた最強の堤防が音をたてて崩されて、溺れた僕は息ができない。 苦しい。苦しいよ。 君と出会わなければ、こんな気持ち知らずにすんだのに。 (18/24) |