レッツスタート、委員長とお仕事
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親友がヘマをしたのでその尻拭いを任されました。
「ひとことで言うならそんなとこです」
「へえ。沢田綱吉もずいぶん舐めたマネをしてくれるものだね」
目の前、ぎらりと黒い瞳を光らせる雲雀恭弥。
一瞬、ピリリと刺すような何かが確かに肌を撫でたのを感じた気がして、佐藤郁は思わず後ろへ踵を引きかけた。
何の因果か運命か、
小学からの親友に泣きつかれ渋々承諾した結果、学校中、いやこの並盛全体から恐れられる風紀委員長・雲雀恭弥の側近として1週間働くことになった、
これが、現在の自分の状況である。
「……で、君は何ができるの」
しょっぱなから何やら不穏当な言葉である。
「……えーと、お茶くみ?」
「それだけ?」
それだけも何も。
「いや、書類整理とか、俺がやっていいことならやりますよ」
机に肘を突き、こちらを舐めるように見上げている雲雀に肩をすくめる。
風紀委員の仕事など知ったこっちゃないが、要領を教えてもらえればできない自信は無い。
だが。
「僕は君に物事を教える気なんてないよ。面倒くさい」
「でしょうね」
なんとなく予想できていた言葉に、息を吐く。
「……それなら俺はどうすれば?」
「そこらの書類見て、自分でどうやるか学びなよ」
至極面倒そうにそう言って、雲雀がおもむろに何かをほうる。
反射でそれを受け取って、郁は思わず嘆息した。
「……何この量」
「ソレ、今日1日で終わらせて」
終わらなきゃ居残りだから。
あっさり言った雲雀の横顔と、手元の書類を二度見する。手元の、というより腕の中の、と形容するにふさわしいその紙束の量は、明らかに自分の「1日分」の許容量を超えていた。
「……ヒバリサン」
「何」
目と目が合って、後悔した。――文句があるなら咬み殺すよ。
腕の中に目線を落として、ひとつため息。
後悔した。雲雀と目を合わせたことにではなく――小学校からの腐れ縁の懇願に、軽い承諾をしたことを。
――……雲雀さんに、遅刻多すぎて今度応接室で仕事手伝うように、って……
――……オレ、リボーンに今週ずっと修業言い渡されてるんだ。行けないんだよ、どうしよう――
半泣き顔で見上げてきた、大きく潤んだ瞳を見たら、もう言う事なんてひとつしか見当たらなかったのだ。
――なら、俺が代理に行ってあげようか。応接室。
やらかした、かな。
ソファの前、低めの机に書類を下ろして、ちらりと目をやる。
自分専用らしい、重厚な事務机(……と呼ぶのも疑わしいほど立派な物だった)に悠然と座り込み、日誌をめくる風紀委員長。
いやそれ見てるよりよっぽどこの書類処理しろよ、内心でそう呟いて、郁は仕方なしに自分の手元へ視線を戻した。
これでもかと言わんばかりの書類の山。辞書とかこんなサイズじゃなかったっけ。
ため息をつくと、郁は腹をくくって1番上のプリントをめくった。