My lover. | ナノ



マイ、スウィート ラヴァー。

■ ■ ■


 その日、応接室へ入った郁が初めに目にしたのは、自分の胸元へ一直接に飛び込む何かだった。

「うわっ、え、何すかコレ」
「腕章」

 慌てて両手でキャッチすれば、そっけない返事が返ってくる。だが郁は構うことなく、受け取ったそれを掲げて頬を緩めた。

「風紀、の2文字……綱吉が聞いたら、発狂しそうだ」
「君が風紀委員になるってことを?」
「うん」

 あ、でも俺が雲雀を好きだって、綱吉とっくの昔に勘付いてたっけ。
 『雲雀さんのどこらへんが、……好きなの?』といういつぞやの言葉を思い出し、だったらとっくに、俺が風紀委員になったことなんて勘付いているのかも、とぼんやり考える。ずいぶん前のやり取りを思い出して、郁はなんとなく懐かしく思った。

「その腕章を身に付けるからには、誇りを持って働いてもらわないとね」
「げー……また、こき使われる」
「何か言った?」
「何も」

 答え、郁は手元の輝く腕章を眺める。

「気に入ったかい」
「うん。……だって、雲雀も付けてるし」
「馬鹿だね、風紀委員は全員付けるんだ。僕だけじゃない」
「知ってる、けど」

 それは知ってる。でも。
 腕にはめて、郁は笑う。


「雲雀」
「何、郁」
「ちょっとお揃いみたいで、……嬉しい」
「馬鹿じゃないの」


 たかが腕章くらいでと口ではそう言いながら、雲雀もまた楽しそうに笑い、郁の唇にキスを返した。






……Fin.




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